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寝室の空気を整え、睡眠の質を上げよう ~良い眠りがこどもの心と体を育てる

2020.07.21インタビュー

「寝る子は育つ」というように、こどもにとって睡眠はとても大切なもの。分かってはいるものの、なかには寝つくのが遅かったり、朝起きてもぼーっとしている、というお子さんも多いのではないでしょうか。「良い睡眠をとるためには、寝室の環境を整えることも大切なんですよ」と話すのは、眠りの専門家として講演や執筆活動を行っている快眠セラピストの三橋美穂さん。今回は、こどもにとってなぜ眠りが大切なのか、さらに寝室の空気と眠りの関係についてお聞きしました。


三橋美穂(快眠セラピスト・睡眠環境プランナー)
寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、とくに枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うかわかるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。主な著書に『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)ほか多数。https://sleepeace.com/

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眠りは質も量も大事。眠っている間に脳と体が作られます


中学校で講演を行ったときの様子。冒頭、「みんなの将来の夢はなんですか」と聞くと、生徒たちは「睡眠とどういう関係があるんだろう」とキョトンとした顔をするそうですが、夢を叶えるために必要な学力や体力、美容には睡眠が欠かせないと話すと、生徒たちは睡眠の重要性を実感するそうです(画像提供:三橋美穂)https://sleepeace.com/

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ーこどもにとって睡眠が大切な理由を教えてください。

こども時代の睡眠は、脳をつくり、育て、守り、修復するために、とても大切な時間です。人は睡眠時、体の眠りの「レム睡眠」と、脳の眠りの「ノンレム睡眠」を繰り返しており、そのノンレム睡眠は「浅いノンレム睡眠」「深いノンレム睡眠」に分けられます。大人は浅いノンレム睡眠の時間が長いのですが、こどもの場合、睡眠時間の半分近くを占めるのが深いノンレム睡眠とレム睡眠。実はこの2つの睡眠時間がこどもにとって重要で、深いノンレム睡眠時に成長ホルモンが分泌されて骨や筋肉が作られ、レム睡眠時に神経ネットワークが構築され、大脳が育てられます。つまりこども時代の睡眠が、脳や体の成長に大きく影響しているのです。

また「睡眠は質がよければ短くてもよい」という人もいますが、実は量(長さ)も重要です。というのも、人はレム睡眠時に事実や経験など言葉に関する記憶(エピソード記憶)を定着させ、深いノンレム睡眠時に体で覚えた記憶(手続き記憶)を定着させています。レム睡眠は、睡眠の後半に出現頻度が高くなるため、睡眠時間が短くなるとレム睡眠も少なくなり、結果的にエピソード記憶を定着させる時間が短くなってしまうのです。

ー理想的な睡眠時間はどれくらいでしょうか。

米国国立睡眠財団によると、3~5歳の幼児で10~13時間、小学生で9~11時間といわれています,(寝床にいる床上時間)。特に小学校に上がるまでは、脳と体の成長のために遅くとも21時までに寝かしつけるようにしたいですね。最近は習い事や塾、部活で睡眠不足になる小中学生が増えていますが、学力低下や意欲低下、キレやすいなど、様々な問題を引き起こす可能性があるので、ぜひ睡眠時間を優先的に確保してほしいと思います。

一方、働き盛りの大人にとって理想的な睡眠時間は、7~8時間といわれていますが、これは人によって違うので、自分にとってベストな睡眠時間はどれくらいか、調べておくといいですよ。方法としては1週間ずつ、睡眠時間を変えてみてください。例えば1週目は8時間、2週目は7時間半、3週目は7時間……というように。それで日中のパフォーマンスがもっともよいと感じるのが、あなたにとってベストな睡眠時間です。私の場合、8時間だと長すぎて夜寝つきが悪くなり、7時間だと夕方少し疲れを感じたので、7時間半がベストだと分かりました。

一日の始まりに朝日を浴びて。より良い睡眠のために、寝室は空気まで整えましょう。

ーでは、よい睡眠を取るために心がけたいことは何でしょうか。

眠りを深めるためには、まずは体内時計を整えることが大切です。毎朝決まった時間に起きて、太陽の光を浴びましょう。太陽の光が網膜を通して脳の視交叉上核に届くと、体内時計がリセットされます。また、太陽光によってセロトニンという脳内物質が分泌されますが、セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、精神を安定させたり、パフォーマンスを高めてくれる働きがあるんです。さらにセロトニンは、夜暗くなるとメラトニンという睡眠ホルモンに変わり、安眠に導いてくれます。今は在宅勤務で、朝日を浴びないまま仕事を始めるという人も多いかもしれませんが、それだと体がしっかり目覚めず、寝つきも悪くなってしまいます。そんな人は、窓際で朝食を摂ったり、仕事をしてみるのもいいと思います。

さらに日中活動的に過ごし、就寝前1~2時間前に入浴して体温を上げておくと、軽い疲れと体温の低下が眠気を誘ってくれます。就寝前は、照明を落としてリラックスして過ごしましょう。特にこどもは目の水晶体がクリアなので光の影響を受けやすく徐々に光を暗くしていくとそのまま眠くなってくる、というお子さんも多いようです。

また寝室を快適に整えておくと朝までぐっすり眠れます。

ー快適な寝室とはどのような状態でしょうか。

まず室温は、冬は18℃以上、夏は28℃以下がよいといわれています。湿度は40~60%が適切。低すぎると肌やのどが乾燥し、高すぎると不快なだけでなく、ダニが繁殖しやすくなりますので湿度も意識しましょう。

さらに寝室の空気の質も、とても大切。

そもそも人が一日に体に取り入れているもののうち、食べ物が7%、飲み物が8%に対し、空気は83%(重量比)と圧倒的に多く、そのうち室内空気は57%に上ります。そんな室内の空気が汚れていたら……本能的に体に取り入れたくない!と思ってしまいますよね。睡眠中でも呼吸が浅くなり、睡眠の質が低下する可能性があるんです。
実際、寝室には衣類や寝具などホコリが立つものが多いうえ、ダニの死骸やフン、花粉やPM2.5も入り込み、空気が意外と汚れていますので、常に清潔に保つよう心がけましょう。

まず行ってほしいのが換気。
換気は短時間で室内の空気を入れ替えるための基本的な方法です。さらに窓を閉めっぱなしだと室内の二酸化炭素が増え、酸素濃度が低下して、やはり睡眠の質が下がってしまいます。今は新型コロナ対策として換気の重要性が注目されていますが、快適な睡眠のためにも、新鮮な空気と入れ替えましょう。

さらにこまめな掃除機がけを。
特に秋になると、夏に繁殖したダニの死骸やフンが溜まってくるので、床掃除と合わせて、布団掃除機などで布団のハウスダストを取り除き、シーツも洗いましょう。これらを行ったうえで空気清浄機を稼動させておけば、睡眠中の空気も安心ですね。

よい睡眠は、よい人生をつくるといっても過言ではありません。お父さん、お母さんはお子さんの将来のために睡眠習慣を整えてあげるとともに、ご自身の睡眠も見直してみてはいかがでしょうか。

Text by 田中 真紀子