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専門家に聞いた、秋冬に空気中で激増するカビ対策法

2025.10.20エッセイNEW
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カビといえば梅雨や夏場を思い浮かべがちですが、実は秋から冬にかけてもカビは繁殖しやすくなることをご存じでしょうか。生活・暮らしを科学する. 第三者研究機関として、暮らしに関わるさまざまな商品を科学する「エフシージー総合研究所」の橋本一浩博士によれば、「真夏は気温が高すぎて、一部のカビは活動が鈍ります。しかし、気温が20〜30℃程度に落ち着く秋になると、カビがもっとも好む温度帯に戻ることで再び活発化します」とのこと。

さらに「秋雨や結露で湿度が上がることで、繁殖条件が整い、冬本番の1〜2月は空気が乾燥し、活動は落ち着きますが、今度は窓の結露や北側の部屋など、局所的に湿度が高い場所では依然としてリスクが残る点に注意が必要」と説明します。

室内に潜む3種類のカビ

  • 黒カビ(Cladosporium
    浴室や窓際の結露など、水分の多い環境に繁殖しやすい。目に見えるため発見は比較的容易。

  • コウジカビ(Aspergillus
    畳や絨毯、ハウスダストの中に潜み、湿度が比較的低くても生育可能。空気中に漂う量が多く、呼吸で吸い込むリスクが高い。

  • 青カビ(Penicilliumなど)
    通常の住宅ではあまり発生せず、水漏れや慢性的な結露といった“住宅環境のトラブル”がある家に多い。コンクリート打ちっぱなし住宅など、湿気がこもりやすい構造でも見られる。

このように、黒カビやコウジカビは日常の対策である程度抑制できますが、青カビが広範囲に見つかる場合は、建物自体の改善が求められます。

年齢で異なるカビの健康リスク

カビを吸い込むと、もっとも一般的にはアレルギー性鼻炎や咳など呼吸器症状を引き起こします。

  • 高齢者や免疫が弱っている人では、肺真菌症など重症化するケースも報告されています。
  • こどもの場合は、まずはダニによるアレルギー感作が先行することが多く、カビは二次的に作用する形でアレルギーを悪化させると考えられています。

橋本博士は「こどもにとっても大人にとっても、空気中のカビ胞子の量を減らすことは健康リスクを下げるうえで重要」と強調します。

暮らしの中でできるカビ対策の3ステップ

誰もができる暮らしの中のカビ対策として、以下の3ステップを意識しましょう。

  1. 湿度コントロールが最優先
  • カビが繁殖しやすいのは湿度75%以上。
  • 理想は60%前後、これを超えるとカビ繁殖リスクが一気に上がる。
  • 冬の加湿器は使いすぎると逆効果。結露を招いて黒カビの温床になるため、湿度計を部屋に置き数値で管理することが大切。

  1. 掃除と洗濯で胞子を減らす
  • 落下した胞子は掃除機で除去できるため、畳・絨毯・ラグはこまめに掃除を。
  • 布団やぬいぐるみは洗えるものを選び、定期的に洗濯。軽い寝具にすると扱いやすく、清潔を保ちやすい。
  • 汚れやホコリはダニやカビの栄養源となるため、日常的な掃除習慣がカギになる。

  1. 空気清浄機の活用
  • HEPAフィルター搭載の空気清浄機を選び、常時運転することが有効。
  • 特に寝室やこども部屋といった小空間での利用は効果が高い。
  • エアコンの使用開始時にカビ臭を感じたら、換気と空気清浄機でリセットを。

こども部屋・寝室で特に注意すべきポイント

寝ている時は無防備になりやすく、カビを吸い込みやすいので対策が特に必要です。また、こどものアレルギーを二次的に拡大させないためにも、寝室やこども部屋は特にケアしましょう。

  • 北側の部屋は日当たりが悪く湿度が高いため、こども部屋に配置している場合は要注意。
  • 寝室は結露が生じやすく、こども部屋以上にカビ対策が重要。
  • ぬいぐるみや布製マットはカビの温床になりやすいため、こまめな洗濯や日干しを習慣に。
  • 布団の上げ下ろしや敷きなおす場合など、カビなどが舞いやすいため、空気清浄機を強モードにして大風量で吸い込む。

また、最近人気の「大空間リビング」は、実は空気環境を整える上では難易度が高いといいます。空気清浄機や加湿器の効果が分散しやすく、管理がしにくいのです。橋本博士は「在室時間が長い寝室やこども部屋など、生活の中心となる部屋を重点的にケアすることが現実的」と指摘します。

湿度・掃除・空気清浄機で快適な秋冬を

最後にあらためて秋から冬は、カビが再び活発化する季節。家庭でできる基本的なカビ対策は以下の3本柱に集約されます。

  1. 湿度を60%前後に保つ(過度な加湿は避ける)
  2. 掃除と洗濯を習慣にする(特に畳・絨毯・布製品)
  3. HEPA式空気清浄機を活用する(寝室・こども部屋を重点的に)

目に見えない空気中のカビを減らすことは、こどもの健康だけでなく、家族全員の安心につながります。まずは温湿度計などを設置し、日常の空気環境を「見える化」することから始めてみましょう。

Text by 滝田 勝紀
ブルーエア空気清浄機

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家電スペシャリスト
滝田 勝紀

All Aboutの家電ガイド。楽天のショッピングSNS「ROOM」の家電公式インフルエンサーを務め、フォロワー数は約56万人(2023年5月現在)以上を抱える。ベルリンで毎年開催される世界最大の家電見本市「IFA」ほか、海外取材の経験も豊富。MZ世代へライフスタイル提案するBeyond magazineのプロデューサーを務める。

Beyond magazine:https://www.beyondmag.jp/