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日本とは全然違う?北欧在住日本人に聞いた ペット先進国スウェーデンのペット事情

2022.10.17エッセイ

社会保障制度が充実し、高福祉国家として有名なスウェーデンは、人間と同じくペットの権利も大事にしている動物福祉の先進国でもあります。そんなスウェーデンに4年前から暮らし、スウェーデン在住歴17年のヨウコさんとともにYoutubeチャンネル「Nord-Labo北欧研究室」を運営する“マホさん”こと小和瀬麻帆さんに、日本とは異なるスウェーデンの驚きのペット事情について伺いました。

マホさん

マホさん
小和瀬 麻帆(こわせ まほ)。千葉県出身。幼少の頃タイのバンコクで育ち、渋谷教育学園幕張高校卒業後、アメリカのジョージア大学へテニス留学。スウェーデン人との結婚を機に、2018年にストックホルムへ移住。在住歴4年。ITコンサルタントとして働く傍ら(現在は今年生まれた長女の育休中)、2年前からYouTube「Nord-Labo北欧研究室」を運営中。『幸せの秘密を見つけよう』というコンセプトのもと、子育て、介護、医療という難しいトピックから、ゆる~い食レポまでさまざまなトピックを配信中。
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCsZC6jvVhEL1OttIeNWkisQ

犬を飼うにはブリーダーの厳しい審査がある!

––スウェーデンには日本のようなペットショップがないというのは本当なのでしょうか。

マホさん/はい。スウェーデンには犬猫の生体販売を行っているペットショップはほぼなく、子犬はブリーダーから譲渡してもらうのが一般的です。しかも、欲しいからといってすぐに譲ってもらえるわけではなく、ブリーダーによる厳しい審査があります。ブリーダーと面接し、犬を飼うには適さない家庭だと判断されると、譲ってもらえません。犬を譲ってほしいとやってくる人の90%は断られるという話も聞きます。

譲渡の判断基準の1つが経済力です。スウェーデンはオープンな国なので、ネット上で個人名を検索すると、その人がどこに住んでいて、どのぐらいの収入あるかなど、個人情報が大体わかってしまうんです。たとえブリーダーからOKが出たとしても、子犬の引き渡しは生後3か月後。これは、犬も生まれて3か月間は母犬、兄弟犬と一緒に過ごすべきと考えられているからです。

––スウェーデンでブリーダーを職業にしている方は多いのでしょうか。

マホさん/スウェーデン・ケネルクラブによると、1万6000人もの人がブリーダーとして登録しています。ブリーダーになるためにはメンタルテストやフィジカルテストがあるだけでなく、倫理性も厳しくチェックされます。また、動物愛護法に基づいたケネルクラブのガイドラインによって飼育環境を中心に細かく規定があります。それにもかかわらず、ほとんど収入にならないそうです。私がインタビューしたブリーダーはペットサロンを経営していて、そこからの収入で生計を立てていました。

スウェーデンは大型犬も公共交通機関で同伴OK

スウェーデンのペット事情02

––どんな乗り物でも、一緒に乗ることができるのですか。

マホさん/バス、電車、フェリー、ほとんどOKですね。犬が電車に乗っている姿は当たり前のように見かけますが、みんなおとなしく乗っています。また休日ごとに、犬と一緒に出かけます。スウェーデンは首都ストックホルムからでも森が近いほど自然が多いので、犬とハイキングに行ったり、広い公園で放し飼いにしたり、夏は湖に飛び込んで泳いだりしている姿をよく見かけます。冬は飼い主さんと一緒にクロスカントリースキーをしているワンちゃんを見たこともあります。

賃貸も基本的にペットOK

––日本では、賃貸住宅の多くがペット禁止ですが、スウェーデンは違うのですね。

マホさん/ペットも大事な家族だから、賃貸であっても一緒に暮らして当たり前だと考えられています。物件情報に「ペットNG」と書かれていなければ、問題ありません。

––「ペット可」だとしても、賃貸だと、部屋を汚さないように気を使いますよね。

マホさん/スウェーデンは日本と同じで靴を脱ぐ文化なので、犬も外に行ったら足を拭いてきれいにしますし、床に傷がつかないようにこまめに爪を切るなどはしますが、日本は世界の中でもきれいのレベルが違うので、そこまで細かく気にしていない人が多いように思います。また、「この場所は自由にしていい!」というエリアを作っている家庭が多いですね。

ペットも若い時はエネルギーがあり、はしゃぐのが本能。それをやめさせるのではなく、ここなら何をしても良い、という場所を作り、汚されたり壊れたりして困るものは置きません。犬だけでなく、子育てにおいても同じように考えます。

犬のための幼稚園がある

スウェーデンのペット事情03

––犬のための幼稚園……これは、どういうことなのでしょうか。

マホさん/スウェーデンでは「犬だけで6時間以上お留守番させない」「1日最低3回は散歩させる」というルールがあります。でも、共働き家庭だと難しいですよね。そこで、犬の幼稚園を利用します。こどもの教育費は実質無料ですが、犬の幼稚園は実費です。利用回数や時間により異なりますが、ストックホルムで2500-3500SEK(3万〜5万円)ほどかかるようです。

––子育てをしながら犬を飼うご家庭は多いのでしょうか。

マホさん/私には6か月の娘がいるので、今娘と犬がいたら大変だろうなと思うのですが、小さなこどもと子犬を一緒に育てている人は少なくないですね。また、結婚を考えているパートナーが一緒に子育てをしていける人かどうかを見極めるために、こどもを授かる前に犬を飼ってみる人もいるようです。

どの犬も、よくしつけられている

––これは、ブリーダーがしっかりしつけをしてくれているということですか。

マホさん/それも大きいと思いますが、飼い主自身が犬のしつけ教室に行く方が多く、そこで学んでいることも影響していると思います。そのため、犬のしつけの仕方が飼い主の間で一貫していて、人によって犬への関わり方が大きく違うということがないんですね。スウェーデンではブリーダーから譲り受けるのに審査があったり、欲しい犬種に出会えるまでに時間がかかったり、さらに飼育環境や散歩の規定があったりと、犬を手に入れることも飼うこと自体とてもハードルが高いので、それだけ責任感の強い飼い主が多く、犬への関わり方にも責任を持っているのだと思います。

スウェーデンの犬のお散歩事情

スウェーデンのペット事情04

––ほかにもスウェーデンでは犬猫用のEUパスポートがあったり、犬をオフィスに連れて行くのがOKの会社があったりと、日本の常識からするとびっくりのペット事情についてYoutubeでお話しされていましたが、もうひとつ気になるのが冬のお散歩です。

マホさん/もちろん、寒い冬も毎日散歩します。さすがにマイナス20℃の日は散歩は短めにしているそうですが、冬は犬用の服を着せて散歩している人が多いですね。私も以前、犬のお散歩をするアルバイトをしていたことがありますが、冬のお散歩をしていたワンちゃんが、1歩歩くごとに前足を上げたまま静止するんですね。どうやら、あまりにも寒くて、足の裏が冷たくなってしまったようで。それで「寒いよね」と声を掛けながら、手で温めてあげると歩き出す、ということがありました(笑)。また、冬は日照時間が短く日中でも暗い時間が多いので、犬も人間も、反射板をつけてお散歩をしています。

ペットと一緒にきれいな空気の中で暮らす

ーー日本だとペットがいる場合、空気清浄機を使うご家庭が多いですが、スウェーデンではいかがでしょうか。

マホさん/窓を開けて空気を入れ替えるだけできれいな空気が手に入るのがスウェーデン。採光性の高い大きな窓のある家が多いので、気候のいいときは窓を開けて過ごします。とはいえ、やはり都心に住んでいる方は、空気清浄機を使っている人が多いようですね。また、おいしい空気を求めて、身近な自然を満喫しに森に行く人もいますね。ペットのいる、いないにかかわらずきれいな空気を求める意識は高いと感じます。

以上、愛犬を家族同然に思い、犬の権利が守り、犬の特性に合わせて住まいや人間のライフスタイルを整えるスウェーデン。スウェーデンのペット事情は、人間だけでなく、動物にもやさしい国の在り方そのものでした。

Text by 羽田朋美
ブルーエア空気清浄機

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羽田 朋美

編集者。出版社時代はローティーン誌やママ雑誌の編集長を歴任。独立後、編集プロダクション「Neem Tree」を設立。ママ向け媒体を中心に、雑誌、ムック、カタログ、企業のオウンドメディアやLP、広告制作など幅広く制作。近年は書籍の編集も手がける。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など、自然豊かな土地を巡るのが好き。小6、小2、6歳の3兄弟の母。
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