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親の喫煙は孫の代まで影響する。こどもをタバコから守るのは大人の義務です

2023.06.26エッセイ
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新型コロナウイルス感染拡大に伴い、在宅勤務が広がり、家庭内での喫煙が増加しています。そしてそれによってこどもたちへの受動喫煙の影響が懸念されています。国立がん研究センターが行ったアンケートによると、在宅勤務によって受動喫煙が増えたと回答した人は10%だったのに対し、減ったと回答した人はわずか1.6%と、コロナ禍を経てさらに増えているのです*1

5月31日は禁煙を推進する記念日「世界禁煙デー」でした。この機会に、受動喫煙の害について調べたところ、こどもに与える影響は想像以上に深刻なものであることがわかったのでご紹介したいと思います。

吸うよりも健康に悪い?受動喫煙の影響とは

そもそも受動喫煙とは、喫煙者のタバコから出た煙や吐きだされた煙(副流煙)を吸うことをいいます。タバコを吸うこと自体、肺がんや脳卒中を引き起こすなど、健康に悪影響を及ぼすことは広く知られていますが、他人に及ぼす害への理解はまだ十分とはいえないのではないでしょうか。

受動喫煙では、火をつけたタバコの先端から出る煙(副流煙)をフィルターを通さずに吸い込むため、喫煙者が吸い込む煙(主流煙)より高い濃度の有害物質が含まれており、肺がんリスクも受動喫煙のない人に比べて1.3倍であることがわかっています*2

さらにタバコの煙が衣類や髪、壁紙や家具に付着し、残留したタバコ成分から有害物質が広がっていく「残留受動喫煙」も、切実な問題。喫煙者がその場にいなかったとしても、健康被害を受けることが明らかになっており、2型糖尿病のリスクが高くなるともいわれています。

つまり「室内で吸わなければ問題ない」とベランダで吸っても、知らず知らずのうちに残留受動喫煙を させていることになります。では換気扇の下で吸えば大丈夫かというと、換気扇では有害物質を取りきることはできないため、こちらも対策としては不十分。こどものことを考えるのであれば、禁煙するのが一番なのです。

世界では6万人のこどもが死亡

受動喫煙は世界各国で深刻な影響を与えており、WHOによると、タバコによる死者は1年間に100万人以上、そのうち5歳未満のこどもは6万人とされています*3。そのため世界各国では全面禁煙化の流れが進んでおり、アメリカの半数の州、イギリス、ニュージーランドなどで屋内全面禁煙の法律が成立。2020年の時点で、屋内でタバコが禁止されている国は67カ国にのぼります。

国内でも、2020年に改正健康増進法が全面施行され、受動喫煙防止が義務化されました。そのため、多くの施設では屋内が原則禁煙に。喫煙者は、望まない受動喫煙を生じさせないように配慮する義務があり、違反者には50万円以下の罰則が適用される可能性があります。

ただし、全面的に屋内禁煙となっているわけではありません。2020年の厚生労働省の一般職場に関する調査によると、事業所の18.8%が屋内禁煙ではないというデータもあります*4。現状では、タバコの悪影響を理解し、一人ひとりが意識を変えることが重要といえるでしょう。

親の喫煙の影響は孫の代まで影響を及ぼすことが明らかに!

ではこどもが受動喫煙にさらされると、どのような影響があるのでしょうか。

国連対がん連合(UICC)によると、中耳炎、風邪、肺炎、虫歯などにかかりやすくなり、メンタルヘルスにも影響を受ける可能性があると指摘しています。またオーストラリアのメルボルン大学の研究によると、親が受動喫煙をしているこどもから生まれたこどもは、アレルギー疾患や喘息などの呼吸器疾患のリスクが高くなる可能性があることが明らかに*6。さらに喫煙者のこどもは将来的に喫煙者になる確率も高く、孫の代まで健康リスクを引き起こす可能性もあることがわかっており、重大な責任を伴うといえるでしょう。

タバコによるこどもへの健康被害で注意すべきことは、煙だけではありません。タバコは乳幼児の興味を引きやすく、誤飲・誤食の事例が多発しています。こどもがタバコを誤飲すると、ニコチンによる中毒症状を引き起こし、死に至る場合も。また、タバコの火でこどもの顔にやけどを負わせる可能性もあります。タバコはあらゆるところに、リスクをはらんでいるのです。

喫煙はこどもにとって虐待に等しい

タバコの害は広く知られているものの、こどもや孫の代にまで大きな影響を及ぼすとは思ってもみませんでした。環境が選べないこどもたちの健康を、受動喫煙によって害することは、児童虐待とする意見も多くあります。受動喫煙による被害を減らすには、こどもの健康を守ることを大人の義務として捉えることが重要といえるのではないでしょうか。


参考
*1:国立がん研究センター「新型コロナウイルスとたばこに関するアンケート調査 報告書」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2021/0531/index.html

*2:国立がん研究センター「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍」
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/0831/index.html#:~:text=%E6%9C%AC%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%8F%97%E5%8B%95%E5%96%AB%E7%85%99,%E3%81%8C%E7%A4%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

*3:日本経済新聞「受動喫煙で子供6万人死亡 WHO、対策強化求める」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45446430Q9A530C1CR0000/

*4:e-ヘルスネット「進んでいる世界の受動喫煙対策」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-05-002.html

*5:UICC(国際対がん連合)「たばこの煙から子どもたちを守るには」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1024-9n.pdf

*6:メルボルン大学「受動喫煙は将来の世代に喘息のリスクをもたらす可能性があることが研究で判明」
https://www.unimelb.edu.au/newsroom/news/2022/september/second-hand-smoke-possible-asthma-risk-for-future-grandchildren,-study-finds

Text by 福永太郎
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ライター・編集者
福永 太郎

家電専門家を中心にさまざまな分野の専門家に取材を行う。ROOMIE、ライフハッカー[日本版]、ギズモード・ジャパンなどで執筆。