コラムColumn

睡眠時無呼吸症候群は命に関わる? 治療を通して身に染みた、空気の大切さ。

2021.01.20エッセイ


生活の質を下げ、命に関わる睡眠時無呼吸症候群

私ではない、夫の話しだ。結婚して十数年来、私は夫のいびきに悩まされてきた。グ~グ~……なんてかわいいものではない。グガゴゴゴゴゴゴゴ!!プシュ~、ンゴッ!と、様々な騒音が一晩中響き渡るのだ。おかげで睡眠不足になった私が怒り半分で寝室を別にしたのは言うまでもなく、マンションの共用廊下にいびきが響かないよう、夫の寝室を窓のない真ん中の部屋に変えた。キャンプに行っても、テントでは周囲に迷惑がかかるので、夫だけ車で寝てもらっている。

当初はとにかく「うるさい」「近所迷惑」と不満しかなかったが、このいびきが健康上、非常に危険だと分かったのは、「睡眠時無呼吸症候群(以下、無呼吸)」という言葉を頻繁に耳にするようになってからだ。もしかして夫も?と思い、様子を観察してみると……ガーガーと大きないびきがピタっと止まり、プールに潜っているように息を止めたまま30秒。いきなり「ング、ングッ!プハー!!」と大きく息を吐く。見ているだけで苦しそう……。間違いなく無呼吸だ。

医学的な定義でいうと、10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態をいう。これを放置しておくとどうなるか。一般社団法人日本呼吸器学会によると、「高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高く」なり、「AHI30(AHIについては後述)以上の重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍」にもなるという。つまり命に関わるということだ。


深い睡眠は0.3%、酸素飽和度74%の重症だった!

実際、熟睡できていないから常に体調も悪そうだ。頭痛や倦怠感は日常的だし、帰宅時に電車で寝過ごし、始発→終着駅を1往復したり、夕食を食べながら眠ってしまうなど、傍から見ても睡眠リズムが乱れているのが分かる。

かくいう本人は呑気なもので、いくら私が睡眠外来の受診を促しても、「そのうちね」とのらりくらり。そこで睡眠中の様子を動画で撮って見せてみたが「苦しそうでかわいそう」とまるで他人事だ。自分は寝ているつもりなので実感がないのだろう。しかし、そんな夫もこのコロナ禍で、重い腰を上げた。「健康のために、できることから改善していきたい」という。

無呼吸の検査は「ポリソムノグラフィー(PSG)」で行われた。睡眠中の脳波や心電図、胸部・腹部の動き、鼻からの空気の流れ、動脈中の酸素飽和度を細かに測定するのだ。そして、この検査で分かったのは、夫の無呼吸が想像以上に重症だということだった。

こちらがそのときのデータと評価だ。



医療機関から渡されたPSGの結果には、驚きの数字が連なっていた。これは一刻も早く治療を始めなければ

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「AHI30以上は重症」と先述したAHIは、30を余裕で超えて37.5。AHIとは、睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数のことで、5≦15が軽症、15≦30が中等症、30~が重症となる。さらにコメントを読むと、「酸素飽和度が74%まで低下するイベントも見られた」とあり、背筋が凍る思いがした。酸素飽和度は新型コロナの症状のひとつとして注目されており、基準値は95~99%。90%を切ると呼吸不全で酸素療法の対象となる。

さらにノンレム睡眠中の睡眠の深さも深刻だ。ノンレム睡眠は一般的に、N1とN2は浅い眠り、N3は深い眠りに分類され、N3の割合は平均5~32%だそうだが、夫のN3はわずか0.3%。つまり、ほとんど熟睡していないことになる。こんな状況を長年続けていたなんて、確かに夫、かわいそう……。



CPAPを装着した様子は物々しい(笑)。当初は違和感で眠れなかったそうだが、今では朝まで眠れているようだ

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さっそく、睡眠時無呼吸症候群の治療で使われるCPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)を装着することとなった。圧力をかけた空気を鼻から送り込むことで、気道を広げて無呼吸を防止するものだ。これが劇的に功を奏し、装着したその日から、いびきがまったく聞こえなくなった。朝一人で起きられるようになったし(今までは何度起こしても起きられなかった)、日中の体調も改善され、頭痛の頻度が減ったり、集中力も高まった実感があるという。

もちろんCPAPは症状を改善する対症療法であって、無呼吸自体が治るわけではない。それでも体や心臓への負担が減った安心は大きく、元気に過ごしている様子を見て、治療を始めてよかったとつくづく思う。今後はCPAPを使いながら、ダイエットを含め次の治療法を模索していくことになるようだ。


増えている、こどもの睡眠時無呼吸症候群



思わず深呼吸したくなるようなおいしい空気をお部屋でも吸わせてあげたい

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睡眠時無呼吸症候群というと大人の病気のように思われがちだが、実はこどもにも増えているという。主な原因は、アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大により鼻呼吸がうまくできないこと。さらに花粉症やアレルギー性鼻炎、肥満に起因する無呼吸も増えているそうだ。こどもの場合、重症度分類の基準が厳しく、AHIは1≦5が軽症、5≦10が中等症、10以上が重症となる。

こどもにとって睡眠の質の低下は大人より深刻だ。本コラム(寝室の空気を整え、睡眠の質を上げよう ~良い眠りがこどもの心と体を育てるhttps://cafc.blueair.jp/column/interview/467/)でも紹介したように、心身の成長に大きく関わってくるからだ。お子さんが大きないびきを繰り返したり、呼吸が数秒間止まったりしている場合はもちろん、食欲や集中力が低下していたり、イライラしているときは無呼吸を疑ってみる必要もあるかもしれない。

今回、睡眠時無呼吸症候群を通して、空気が人にとっていかに大切かを改めて考えさせられた。人は1日に約3万回呼吸し、500mlのペットボトル約3万本分の空気を吸っているといわれている。そして、それが少しでも減ってしまうと――たとえば無呼吸によって空気が十分取り込めなくなると、たちまち体調が悪くなってしまうし、逆に空気をしっかり取り込めれば体は元気になれるのだ。だからこそ今後も空気は食べ物同様、質にもこだわっていきたいと思う。

Text by 田中 真紀子

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