コラムColumn

子連れ旅でも安心。世界一平和な国アイスランドは空気と水のおいしさも世界最高峰!

2021.07.27エッセイ

小さなこどもを連れた海外旅行となれば、気になってくるのが治安や衛生面。スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどの北欧は、世界でも空気がおいしく安全なことで知られるが、なかでも子連れ旅にぴったりなのがアイスランドだ。ダイナミックな自然に、世界一の治安、きれいな水ときれいな空気がそろった、ファミリーフレンドリーな国なのだ。



滝が豊かな国アイスランドの有名な滝の1つ、ゴーザフォス

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火と氷の国アイスランドは、どんなところ?



地熱地帯にある人気観光地、ストロックル間欠泉。10分おきに、20メートルほどの高さまで温水が吹き上がる

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北欧の島国アイスランドは、「火と氷の国」とも呼ばれる。地熱と氷河の影響を大きく受けながら、その恩恵を上手に活用している国だ。観光に関しても、間欠泉や巨大なミルキーブルーの温泉と言った地熱関連、氷河や流氷、氷の洞窟などの氷関連が多い。いくつかの都市に人口が集中しているため、国土の大部分には手つかずの自然が残っているのだ。

犯罪発生率の低さなどから、国際的シンクタンク「経済平和研究所」が毎年発表する「世界平和度指数」では、驚くことに2008年から現在まで、世界ナンバーワンの評価を維持し続けている。つまり世界でもっとも平和な国なのだ。

こどもにたっぷり吸わせたい、おいしい空気

その良好な治安からか、赤ちゃんを屋外でお昼寝させる文化があるほどだ。冬には気温が氷点下にもなるが、お構いなし。ベビーカーごとしっかり防寒をして庭に出す。日本の首都圏に住む私からすると、気温だけでなく花粉や排気ガスが気がかりで、とても真似できないのだが、アイスランドでは真逆の考え。「外の新鮮な空気こそ、こどもの成長によい」ということなのだ。

言われてみれば、アイスランドに行く度に気になっていたお土産がある。


アイスランドの山の新鮮な空気の缶詰、約1000円。注意書きは「アイスランド国外で開けてください」。(写真提供:堀真菜実さん)

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土産屋には、アイスランドの新鮮な空気を閉じ込めた缶詰が並んでいた。果たしてあの缶がどれだけ売れているのかは定かでないが、実際、それが定番土産となるほどに、アイスランドの空気はきれいなのである。

というのも、アイスランドの消費電力は、ほとんどを地熱と水力の自然エネルギーでまかなっている。二酸化炭素の排出を抑える仕組みも同時に取り入れているため、化石燃料を活用する他国と比べて、大気汚染が圧倒的に少ない。

さらに、WHOが行う調査において、アイスランドは例年、空気中のPM2.5の少なさが世界トップ3に入っているというデータもある。

二酸化炭素などのガス、粒子の浮遊物ともに、汚染物質が最小限に抑えられているため、アイスランドは都市部でさえも、空気が澄んでいることがわかっているのだ。

空気や資源を大切にする姿勢と、きれいな空気に価値を見出す文化。アイスランドの人々は日ごろから、私たち以上に空気という存在を意識しているのだろう。


こどもも安心して飲める、世界一おいしい水

アイスランドは、水道水が世界一おいしいことでも知られる。そもそも水道水が飲める国自体、日本を含めて世界でたった十数カ国。そんなレアな国々の水道水も国際的なガイドラインを満たしているだけで、おいしくはなかったり、薬品で消毒したものだったりする。

ただ、アイスランドは別。水道をひねれば、なんとおいしい天然水が出る。水の源は、アイスランドを覆う氷河。氷河から溶け出す水は、数千年に渡って自然の浄化システムで濾過された、純粋で安全なミネラルウォーターなのだ。「氷の国」の恩恵である。



この氷河から溶け出す水が、ミネラルウォーターして水道水から出てくる(写真提供:堀真菜実さん)

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私が人生最高の水と出会ったのも、やはりアイスランドの、シルフラという湖だった。ここは、「地球の裂け目」とも呼ばれる、世界でも珍しい大陸プレート同士の境目(ユーラシアプレートと北米大陸プレート)に位置する。毎年2cmずつ広がるという大地の割れ目へ氷河の天然水が染み出し、ついに不純物も生物もほとんどない淡水の湖となったのがシルフラだ。水中は100m先でも見える驚異の透明度で、ダイバーの聖地ともなっている。

ダイビングライセンスを持たない私は、シュノーケリングで水面付近を泳いだが、視界はクリアで、遠くの岩の割れ目も川底もバッチリ見えたので十分だった。このとき、もとより知っていた透明度に勝って驚いたのが、水のおいしさ。口に入ってくる水にはなんだか甘みがあり、おそらくキンキンに冷えた水温も相まって、忘れられない味である。



水温が低いため、シュノーケリングであっても本格的なドライスーツを着用する。湖の水なんて飲むものではないと思っていた私は、おそるおそる「水がおいしかった……!」とつぶやいたのだが、現地ガイドからは「だろ?天然のクリアウォーターだから当然だよ!」と笑顔で返された。

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こどもに見せたいアイスランドの景色

アイスランドでは、数々の観光地を訪れた。どれも感動ものだった。ただ、この国のことを振り返るときに必ず思い出す、名もなき景色がある。

観光地に向かう途中だった。人家もない草原をしばらくレンタカーで走り、ランチにしようと座り込んだ、何てことのない丘の上。遮るもののない空がまぶしく、通り抜ける風が心地よい。初夏の緑地ときらきら反射する川を見渡せた。
メニューは、節約のために朝食の残りもので作ったサンドイッチと、ボトルに汲んだ水道水だったが、ごちそうに思えた。旅でもっとも忘れられない食事だ。

当時の私は、雄大な自然を独り占めできる贅沢さに感動したのだと思っていた。しかし今思うと、あの満足感には、アイスランドのおいしい空気とお水が一役買っていたに違いない。



アイスランドの名もなき丘で、きれいな空気とおいしい水を味わう贅沢なひととき(写真提供:堀真菜実さん)

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家族でアイスランド旅行、となると、北欧ならではの物価の高さが頭にチラつくのも本音。それでも、この国の魅力はほかでは替え難い。何しろ、平和な環境においしい水と空気、買いたくても買えないものがタダで揃っているのだから。

海外旅行はもうしばらくおあずけ。

名もなき丘で新鮮な空気を吸い込み、親子でからだの底からリフレッシュできる日を夢見て、今はパンが大好物な1歳の娘と一緒におうちでサンドイッチ作りでも楽しもう。

Text by 堀 真菜実
ブル―エア空気清浄機

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トラベルプロデューサー
堀 真菜実

新しい旅を作るトラベルプロデューサー。世界弾丸一周、廃校キャンプなど、手掛けるツアーは即日満席。はじめましてのメンバーで行く「シェアトリップ」の仕掛け人として、数千人の旅人と国内外を巡り、その経験をもとに、地方自治体や海外の観光局と、観光資源の発掘やツアー造成を行う。人と地域を繋ぐ場作り、メディア出演などでも活躍中。