コラムColumn
窓の専門家「YKK AP」に聞いた、こどもと過ごす部屋の換気のコツ
一日の大半の時間を室内で過ごすこどもたちにとって、室内空気の質は水や食べ物と同じように重要です。空気をきれいに保つために欠かせない「換気」は今、効果的な感染症対策としてさらにその重要性に注目が集まっています。
しかし毎日の生活の中で、家の中全ての窓を開け閉めするのはなかなか大変なこと。特に今の時期は、暑さ対策なども気になります。
そこで、換気のコツについて、窓の専門家である「YKK AP」営業本部住宅事業推進部 住宅商品企画部の山田 司部長にお話を伺いました。
―「換気」が注目されていますが、改めて換気の目的について教えてください。
似たような言葉で「通風」という言葉がありますよね。「通風」は、室内に風を取り込んで涼しくするといった意味がありますが、「換気」は、二酸化炭素や不快なニオイなどの有害物質を部屋の外に排出することを目的としています。「換気」は、部屋の中の空気を外に出すことが大事なんですよ。
―換気というと、真っ先に「窓を開ける」ことが思い浮かびますが、どのようなことに気をつければいいでしょうか。
特に夏場の換気のポイントとしてお伝えしたいのは次の3つです。
1:空気の流れを意識して「対角線」上で空気の通り道をつくる
2:サーキュレーター、扇風機を活用する
3:網戸を上手に活用する
順に説明しましょう。
換気のポイント1:「対角線」上で空気の通り道をつくる
換気においては風の「入口」と「出口」をつくることが大事です。窓を開けただけでは空気が流れないことがあります。意識するのは、部屋の中の空気を大きく動かすということです。
窓が1か所しか開いていない場合
01<画像提供:YKK AP>
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窓の近くは空気の動きがありますが、部屋の隅の淀みには変化がありません。
窓が2か所開いているけれど、横に並んだ位置の場合
02<画像提供:YKK AP>
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新鮮な空気が入っていますが、窓から遠い位置だと、やはり淀みが解
消されていません。
2方向に2か所の窓を開けた場合
03<画像提供:YKK AP>
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これまでの方法よりは随分空気が流れている気がします。
しかしよく見ると、新しい空気が抜けきらず、部屋の中を循環してしまう箇所が出てきています。「部屋の空気を入れ換える」「空気の淀みを解消する」という換気の目的を考えると、もう少し工夫が必要です。
対角線上に窓を開けた場合
部屋に複数の窓がある場合、対角線上に窓を開けると、部屋を空気が通り抜け淀みを解消していきます。
04<画像提供:YKK AP>
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換気のポイント2:サーキュレーター、扇風機を活用する
部屋の窓を1か所しか開けられない場合は、部屋のドアをあけて、家全体で風の通り道をつくるよう意識するといいと思います。扇風機やサーキュレーターを利用して部屋の空気をかくはんして、空気を入れ換えるのもオススメです。
「家の中の空気を外に出さないと、新しい空気が入ってこない」と、イメージしてはいかがでしょうか。
また、夏場の換気は熱気を取り込むため熱中症の心配がありますので、エアコンをかけたまま換気していただきたいです。
換気時間は5分から10分程度が目安になります。
エアコンの温度を低めに設定し、扇風機を窓の外に向けると短時間でも効率的に空気を外に流すことができます。そして、窓を閉めたら冷房の冷気が隅々まで行き渡るよう、扇風機やサーキュレーターを今度は部屋の奥側に向け直しましょう。
05<画像提供:YKK AP>
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―夏場は、夕立など急に天気が変わるときもありますが、雨の日なども換気はするべきなのでしょうか。
換気の目的を考えると、雨の日でも換気をしていただきたいです。学校や幼稚園などでは、雨の日でも換気をしています。雨が入り込まないような位置の窓があれば、ぜひ開けて換気してください。
換気のポイント3:網戸を上手に活用する
「換気」が注目されるようになってから、網戸の問い合わせが増えています。
引き違いの窓を開ける際、中途半端に開けてしまうと窓と網戸の間に隙間ができて、そこから虫が入ってくることがあります。引き違い窓の時は、網戸を締めて、窓を全開にすると、虫が入りにくくなりますよ。
効率的な換気のタイミングとは
朝起きてリビングやダイニングにこれから人が集まるという場合、人が集まる前に換気をして空気の入れ換えをしておくといいでしょう。また、寝室なども空気が淀みがちな場所なので、寝る前の換気がよいと思います。寝具の配置場所を、空気が淀みやすい部屋の隅ではなく、窓の近くなど空気が入れ替わりやすい場所にするといった工夫も考えられます。
お住まいに24時間換気の設備がある場合は、スイッチを常時ONにしてください。およそ2時間で部屋の空気が入れ替わります。
窓を開ける換気の場合、基本は1時間に2回以上の空気の入れ換えを意識していただきたいのですが、食事などで人が多く集まる場所で過ごすときや、長時間ひとつの部屋にいるときは、空気の入れ換えをするタイミングです。
ドアがある部屋はドアを開けて、家全体で風が通るように。寝室など長時間使用しない部屋の場合は、部屋に入ったら窓を全て開けて換気します。
部屋だけでなく家全体の空気の流れを意識することが大切です。
06<画像提供:YKK AP>
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こどもの居場所は風が通る場所につくる
こども部屋の場合、勉強机や寝具を空気が淀みやすい部屋の隅ではなく、窓のそばに置くのもひとつの手です。
まだ小さなお子様は床面に近い低い場所で過ごしていることが多いので、できるだけ風が通る場所に遊び場をつくるとよいでしょう。
テラス窓(掃き出し窓)は窓の近く、腰高窓は、窓の直下よりも少し離れた場所の方が空気は通ります。
小さなお子様がいるときに換気をする場合は、目を離さないよう安全に行ないましょう。
以上、こどもと過ごす部屋の換気のコツについてお聞きしました。
こまめに換気をすることは空気の質を維持するうえでとても重要ですが、一方で外気と一緒に花粉や砂塵、PM2.5など外気由来の有害物質が室内に流入してしまうリスクもありますし、防犯上の理由や窓や部屋の形状などの理由で、必ずしも家全体に対し理想的な換気をかなえられない場合もあるでしょう。
どの程度の換気ができるかはご家庭によってさまざまですが、空気清浄機を使えば空気の質をコントロールすることができます。
デリケートなこどもたちのために、適切な換気と空気清浄機、サーキュレータ―などのアイテムを組み合わせ、24時間365日上質な空気で満たすよう心がけましょう。
窓がポイント! 住まいのじょうずな換気方法
https://www.ykkap.co.jp/info/ventilation/
自然換気を、窓で。
https://www.ykkap.co.jp/info/ventilation_reform/
〈取材協力〉
YKK AP
https://www.ykkap.co.jp/
Text by 伊森ちづる
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