コラムColumn

五感が開放されるキャンプはこどもの教育にピッタリの「教室」です

2020.08.18エッセイ

ここ数年、バーベキューやキャンプを中心としたアウトドアが盛り上がりを見せている。また、猛威を振るう新型コロナウイルスの影響もあり、“三密”を避けて遊べるアクティビティとして注目を集めるのは当然だろう。

筆者も春夏秋冬と、季節を問わずキャンプ場へ足を運ぶようになった。しかし、初心者のころはあえて詳しい友人などに頼らず、つたない知識と心もとない道具を持ち、サバイバル感覚で野営にチャレンジした。

当然トラブルは続出したが、「ハンディライトだけだと、夜になったらほぼ何にも見えないじゃん!」と困れば次回はランタンを用意したり、「うわ、雨だ。テントに逃げよう。でもテーブルとか全部びしょ濡れか……」とタープの重要性に気付いたり、自然の中で自らの無力さを感じさせられ、その問題をひとつひとつ解決していくのが楽しかった。


大人の管理下だからこそ、あえて危険な遊びで怖さや痛みを体感させる

そんなこんなで飽きることなくキャンプの魅力にハマり続けているが、取材で行く以外は、必ずこどもを連れて行く。なぜなら、あんなにいい情操教育の場はないからだ。ITだけでなく、高度にインフラの整った社会では、毎日生活するのに苦労することは少ない。もちろん便利なのはいいことだが、「かわいい子には旅をさせろ」と言うではないか。

まずテレビやスマホ・タブレットのない生活は、否応なく視覚と聴覚が自然に集中する。鳥のさえずり、川のせせらぎ、風の吹く音。夜には小動物の気配も感じられる。いつも都会で過ごす人間なら滅多に耳にしない音ばかりだ。デジタル製品の携行は基本的に禁止しているので、普段はゲーム三昧の息子も、キャンプのときは山育ちのように自然を楽しんでいる。

また、キャンプの醍醐味とも言える「焚き火」は、燃える薪に近づくことで身を持って炎が持つエネルギーを体感できる。またナイフで木を削る工作のような「ブッシュクラフト」も、大人の管理下であれば積極的にその危険性を体感してくれればいいと思っている。痛みや怖さを知ってこそ、自発的に気を付けようとするからだ。


こどもの創作意欲をうまく触発してくれる「料理」



食材入りの牛乳パックを豪快に焚き火へ放り込むだけ。かなりのドヤ顔で調理してくれる

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キャンプでこどもが一番参加したがるのは料理だ。我が家では、朝食の担当は小学生3年と5年の兄妹と決まっている。こどもたちの定番は、使用済み牛乳パックの中にアルミホイルで巻いたホットドッグを突っ込み、焚き火に投下するだけの簡単料理。これに千切りキャベツを加えたインスタントのコンソメスープを添えるだけだ。

冬キャンプでブルブル震えながら温かいスープを飲んだとき、娘は「これ以上ないほどおいしかった」と言っていた。それ以来、キャンプではコンソメスープ、と決めたらしい(笑)。なぜか嗅覚や味覚というのは、そのときの記憶を強く植え付けるようだ。

話がそれたが、料理は前もってメニューを考え、食材の準備や必要な調理道具を考えていく力が身につく。もちろんガス缶を使って調理することもあるとはいえ、やはり焚き火で作りたくなるようで、火加減の難しさも覚えてくれるから一石二鳥だ。



焚き火はコンロと違って火加減が難しい。しかし、すすんで調理したがるので弱火・強火などの調整を理解するようになる

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そして食事が終われば後片付けをしなければならない。すべてを自分の力でやらねばならない、というか、やるのが楽しくなる魅力が大自然にはある。家なら「ママ、ご飯はまだ?」と言うこどもからは信じられないくらい家事(?)にも積極的に取り組む。


蓄えた知識を自然の中で確かめられるのが最大のメリット

蛇口をひねれば水は出る。ガスコンロがあれば火は使える。暑ければクーラーを入れればいいし、冷蔵庫があれば氷だって自由に使える。

だけど家を一歩出て、身ひとつになったとき自分に何ができるのか。それを楽しみながら教えてくれるのがキャンプだ。五感をフルに使って覚えたことは、なかなか記憶から薄れない。家や学校で習ったことの後押しとして、自然体験はさまざまなことを教えてくれる。

きれいな空気がいかにおいしいかを味わえること。
深呼吸が心も体も癒してくれること。雨が降ると土の匂いもすること。お肉が焼ける音って食欲をそそること。森の中は木々の香りに包まれていること。清流の水は思っている以上に冷たいこと。
アウトドアは、本や教師から学んだ知識が事実かどうか確かめられる「青空教室」なのだろう。魚捕り、虫の採取、木々で工作、焚き火で料理、なんでもいいが、こどもにとって間違いなく見た目以上の経験が得られているはず。

海、山、川と場所を選ばずキャンプ場は点在しているので、趣味嗜好に合わせた目的を得られるフィールドを常に探している。大人は仕事を離れてリラックスし、こどもは五感を開放して感受性を豊かに育んでくれるアクティビティとしてのキャンプは、まだまだ遊び尽くせない魅力に溢れているから。

Text by三宅隆