コラムColumn

3年ぶりの家族旅行で感じた、きれいな空気の心地よさ

2022.04.28エッセイ
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コロナ前はこどもの学校の休みに合わせて、国内外の自然豊かな地を旅行するのが楽しみだった。ありがたいことに今の時代は、パソコンとスキャナーとWi-Fi環境があれば、どこでも仕事ができる。日中はジャングルを探検したり、ホテルのプールでこどもたちと遊んだりして過ごし、夜はみんなが寝静まった後に、パソコンを開く。
当時は「ワーケーション」なんて言葉があることは知らなかったけれど、旅の開放感を味わいながら原稿に向かう時間を結構気に入っていた。その後、思うように旅ができなくなり、あっという間に丸2年が経過。
次に旅行できるのはいつになるだろうと思っていた矢先、マイルの有効期限とまん延防止等重点措置の全面解除の時期が重なり、そのタイミングは予想よりも早く訪れた。
3年前には想像すらしなかった、マスク生活下での家族旅を振り返る。

上空8,500mの空気って、どんな味?

3年前は、飛行機の中の空気のことなど考えたこともなかった。それが、「三密」なんて言葉が登場し、誰もが換気の悪い場所や密閉空間を忌避するようになると、航空各社は機内の優れた換気と機内の空気の清潔さをアピールした。
私たちが乗ったANAの航空機は公式ホームページによると、約3分で機内のすべての空気が入れ替わり、エンジンから取り込まれた上空のきれいな空気で換気されているという。さらに空気は常に天井から床下へ流れていて、客室内や特定の場所に滞留しない。機内に循環している空気も、病院の手術室の空調設備にも使われている高性能なフィルターでろ過されてから客室内に供給されているそうで、なんかもう、都会の道端よりも、ずっときれいな空気を吸えるよねっていうレベル。

しかも、上空8,500mの空気ってどんなよ? 山でいうとエベレスト級ってことだ。私がこの人生でエベレストの頂に立つことはおそらくないだろうから、思わず深呼吸したくなったけれど、機内は「お客様同士の不安解消のため」にマスクの着用が必須なので控えた。
今回は全席にパーソナルモニター付きの機材だったので、こどもたちは大よろこび。空気の面でも設備面でも快適な空の旅を楽しんでいたら、あっという間に目的地に到着した。
空港の外に出ると、少しだけモワッとした。そして、目の前を大きなロケバスが通ったかと思ったら、すかさずLINEが鳴った。「今、那覇空港にいるでしょ!」と、友人のヘアメイクさんからのメッセージ。

旅先でバッタリは、昔からよくある。
こうして始まった、4泊5日の沖縄旅行。

世界遺産に。

沖縄ならではの原風景に。

ジンベイザメに。

とことん満喫した。

何度も訪れた場所なのに感動が大きかったのは、長引いた自粛生活の影響もあるだろう。“おうち時間“の中で得たものもたくさんあったけれど、やっぱり、おでかけできるのはうれしい。
早いもので小6、小2、年長になったわが家の3兄弟たち。ただでさえ早いこどもの成長なのに、日々の生活に追われていると、またたく間に過ぎて行く。
そんなときにふと立ち止まり、彼らの「いま」を焼き付けてくれるのが旅だ。

イルカショーに興奮する横顔。
ソーキそばを夢中で食べる姿。
力強く歩く、たくましい背中。

以前沖縄を訪れたときはまだみんな半分くらいの背丈で、三男坊は乳児だったことを思うと、本当に大きくなったなぁって。旅は、普段仕事ばかりで全然お母さんぽいことをしてやれていない私が、母になるひとときでもあった。
今回の旅ではいろいろ見たり食べたりしたけれど、最も印象に残っているのが、南城市にある、数十万年前の鍾数十万年前の鍾乳洞が崩れてできたガンガラーの谷で見た、「大主(ウフシュ)ガジュマル」だ。

垂れ下がっているのはすべて根っこで、この根が露出した樹形を「根上がり」というそうだ。
巨大な根っこの隙間からキジムナーが顔を出しても不思議ではない。
20mほどの長さのある巨大な根は、「神秘」の一言に尽きる。
県内でも随一の大きさを誇る大主ガジュマルのたたずまいに、ただただ、圧倒された私たち。「もう歩きたくない」と言っていた三男も、このときばかりは目を見開いて、眼前にそびえ立つ“揺るぎないもの”をじっと見つめていた。

私はそっとマスクをずらし、思いきり息を吸い込んだ。

体全体に、エネルギーが沁み渡るような感覚を覚えた。

と同時に、私、しばらくの間、ちゃんと息吸えてなかったなぁと感じた。

スマホやパソコンで、日常的に首を前に倒す姿勢になりやすいことだったり、多忙によるストレスだったり、マスク下の生活だったり……原因はいろいろと浮かぶけれど。
大主(ウフシュ)ガジュマルを前にしばらく深呼吸を続けると、先ほどまでは気づかなかった森のにおいを感じるようになった。そして、鼻から吸った空気が喉を通り、気管へと流れていく感覚が鮮明になった。

【きれいな空気を吸う】

ただそれだけなのに、こんなにも清々しく、心地いい。
そして、きれいな空気を吸うことは大切だけど、きれいな空気を守ることも、きれいな空気をつくり出すこともとても大切で、それって確実に、この世界を生きる私たち大人の重要な役割なんだと、心から感じたのだった。

Text by 羽田朋美(Neem Tree)
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羽田朋美

編集者。出版社時代はローティーン誌やママ雑誌の編集長を歴任。独立後、編集プロダクション「Neem Tree」を設立。ママ向け媒体を中心に、雑誌、ムック、カタログ、企業のオウンドメディアやLP、広告制作など幅広く制作。近年は書籍の編集も手がける。趣味はキャンプと家族旅で、タイ、スリランカ、ボルネオ島など、自然豊かな土地を巡るのが好き。小6、小2、5歳の3兄弟の母。
Neem Tree: https://www.neemtree.jp(外部リンク)