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空気清浄機の性能は「CADR」の数値でチェック! でも「CADR」って何?家電ライターが解説します

2023.02.27エッセイ

家庭内で空気の衛生を見直す方が増加し、空気清浄機に注目が集まっています。当たり前ですが空気清浄機を選ぶ際に一番気になるのは「能力」ではないでしょうか。しかし空気清浄機の「能力」とは一体何をみればいいのでしょう?

注目してほしいのがスペックにある「CADR」という項目です。CADRとはClean Air Delivery Rateの略で「清浄空気供給率」つまり、キレイな空気をどれだけ効率よく室内に発生させられるかを示したアメリカ生まれの指標です。よって日本で販売している空気清浄機は必ずしもこのCADRを取得しているわけではありません。

CADRは、空気清浄機を使用するのに適した目安の広さである「推奨フロア面積」を導くために参考にされる値でもあるため、CADRを取得していない場合は「適用床面積」という項目から推察することができます。

今回はこの空気清浄機の性能指標「CADR(Clean Air Delivery Rate=清浄空気供給率)」について解説します。

「CADR」とは?

繰り返しになりますが、CADRとはClea Air Delivery Rateの略で「清浄空気供給率」つまり、キレイな空気をどれだけ効率よく室内に発生させられるかを示したアメリカ生まれの指標です。米国家電製品協会(AHAM)によって規定された規格で、アメリカ、ドイツ、韓国など世界各国で採用されているため、事実上、空気清浄機の性能評価の世界基準といえるでしょう。

「CADR」と「推奨フロア面積」の関係

CADRは煙・ホコリ・花粉の3つの項目でテストされます。この3項目それぞれのCADR値と、「推奨フロア面積」が算出されます。

煙は0.09~1.0μm、ホコリは0.5 ~3μm、花粉は5~11μmの粒子を想定しており、それぞれのサイズの粒子がどれほど効率的に除去されたのかを示します。バランスよく高スコアなのが理想的ですが、ウイルスを懸念するなら煙の数値が高いものを、ハウスダストアレルギーに悩むならホコリのスコアが高いものを選ぶ…というように課題に応じて項目別に参照することも可能です。

CADRの試験は、1008立方フィート(≒約28.4m3)の空間で行います。これは日本の間取りに置き換えると約6畳*1ほどの空間に該当。実生活に近い、広い空間です。

CADRの試験をクリアした空気清浄機には米国家電製品協会(AHAM)の認定ステッカーが付与されます。ステッカーには3項目のCADR値に加え、使用の目安となる部屋の広さ「推奨フロア面積」も記載されています。

「推奨フロア面積」は米国家電製品協会(AHAM)算出・推奨する、空気清浄機が十分な効果を発揮するための広さのことです。

推奨フロア面積 = 煙 CADR 値 x 1.55

天井高約2.4mで1時間に1回の自然換気を想定して、継続的に定常状態で煙粒子の80%までの減少率と、1時間あたり4.8回空気をきれいにできるというCADR要件を基準に算出されています。


引用:https://www.higienis.com/blog/cadr-and-filter-grades-explained/


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日本で多く採用されている「適用床面積(適用畳数)」と「推奨フロア面積」の違い

ここまでアメリカ生まれの性能評価規格「CADR」に基づいた、空気清浄機の対応面積の考え方について説明しました。一方で日本メーカーが基本的に採用している規格は、日本電機工業会規格(JEM)が定める「JEM1467」の項目です。

通常22㎥(6畳)ほどの試験空間*2において自然換気回数1(1回/時間)の条件において、30分で粉じん濃度1.25㎎/m3の空気の汚れ(ニオイ、菌、花粉など)を0.15㎎/m3まで清浄できる部屋の大きさ(高さは一般的な天井高である2.4m)を適用床面積(適用畳数)と定義しています。
「CADR」と同様に、この数値が大きいほど、空気をキレイにする時間が短くなります。

適用床面積(適用畳数)という言葉から、使用する部屋に適切な床面積だと思われがちですが、あくまで「30分で清浄できる部屋の広さ」なので、それを念頭にいれておきましょう。
世界基準であるCADRと比較すると2倍以上の差があるので、十分な効果を期待するなら、適用床面積は1/3~1/2程度にみておくのがおススメです。つまり例えば適用床面積が30畳用の空気清浄機は、実際には10~15畳程度のスペースで使用する…といったイメージです。

「推奨フロア面積」と「適用床面積」の見方

空気清浄機を選ぶ際は「できるだけ対応面積の広いものを」とかねてからおすすめしています。その“対応面積”の考え方も、基準となる規格によって種類があることがお分かりいただけたかと思います。

AHAMが定める推奨フロア面積=1時間に4.8回キレイにできる面積
JEMAが定める適用床面積=1時間に2回キレイにできる面積

試験条件が異なるため一概に比較はできませんが、CADRを取得し、推奨フロア面積の提唱をしているメーカーの場合は「適用床面積」ではなく、「推奨フロア面積」を参考に選ぶことをおすすめします。煙・ホコリ・花粉のCADR値を項目ごとに確認し、ご自身の悩みにより強い製品を選ぶのにも役立ちます。

CADRを取得していない製品は、適用床面積を基準に、ワンランクもしくはそれ以上のスペックアップを検討することをおすすめします。

Text by 石井和美
ブルーエア空気清浄機


*1:畳数:9.2㎡(江戸間)にて計算
*2:日本電機工業会規格 JEM1467 家庭用空気清浄機に定める集じん性能試験の試験条件

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家電プロレビュアー
石井 和美

白物家電や日用品などを中心に製品レビューを得意としています。レビュー歴15年以上。茨城県守谷市に家電をレビューするための一戸建てタイプ「家電ラボ」を開設、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電のテストも行っています。ライター、家電コメンテーター、家電コンサルタント。