コラムColumn
不登校を乗り越えた息子を包むきれいな空気と親心

新年度を迎え、進学や進級あるいは就職など、人生の新たなステージへと踏み出した人も多いことでしょう。中には、そんなお子さんの後ろ姿を頼もしく、でも少し寂しい気持ちで見守っている親御さんもいるかもしれません。
筆者の息子も今年3月に高校を卒業しましたが、残念ながらもう1年、大学受験に向けて勉強することになりました。いわゆる浪人生です。「残念ながら」というのは一般的な前置きで、私たちにとって彼の決断は、(おそらく一般的な家庭では理解しがたいことだと思いますが)誇らしいものでした。
今回は、そんなわが家の話をお聞きいただきたく思います。
「学校は行くもの」という常識を手放す
息子は小学5年生から中学3年生まで、不登校でした。正確にいうと小学5年生の7月に私たちが「小学校を辞めます」と宣言したのです。もちろん義務教育に“辞める”という選択肢はありません。でも5年生になって行き渋りが始まり、行かせようと奮闘すればするほど、息子も私たちも傷つき苦しみました。
他の子は行けているのに、他の子はできているのに、どうしてうちの子はできないの……という葛藤。おまけに学校には毎日、感情なく欠席連絡をしなくてはなりません。この不毛なやり取りに終止符を打つために、「行けない」のではなく「行かない」と決める必要があったのです。
学校に行けなくなった原因は今でも明確ではありませんが、思えば息子は2歳のころから空気を読む子でした。友達におもちゃを取られそうになったら取られる前に相手に渡す、戦隊ヒーローごっこをすれば、一番に「僕、グリーンやる!」と言って人気のレッドを他の子に譲る。ブランコで遊んでいても、誰かが並ぶとすぐに降りる。親としては「少しは自己主張してくれ」と歯痒く思っていましたが、空気を読みすぎる息子にとって、外の世界は生きづらく感じていたのかもしれません。
「今の息子さんに目を向けて」の言葉で決意
息子の不登校を容認することは当然、親にとっても容易なことではありませんでした。
私自身が抱いていた子育ての理想、世の中の常識を手放す作業が必要で、勉強はどうなるの?このまま中学、高校も行けなかったら……?社会人として自立できるのだろうか……?私たちが死んだ後はどうなる……?考えれば考えるほど不安でいっぱいになりました。
そんな私の目を開かせてくれたのが、当時お世話になっていた心療内科の先生でした。その人は少々ぶっ飛んでいて(笑)、真っ黒に日焼けした顔で筋トレしながら「お母さん、心配だ、心配だっていつも言うけど何が心配なのよ。大切なのは“今”でしょう。将来ではなく“今”の息子さんを見てあげなさいよ」と言われました。そして息子の顔を見てから「すごくいい顔しているじゃない。何が問題なの?」と私に言ったのです。おそらく私が一番世間の空気を気にしていたことを鋭く指摘された思いでした。
それをきっかけに私たちも肩の力が一気に抜け、今しかできないことをめいいっぱい楽しもうと決めました。先生に勧められた英会話とテニス(サッカーは空気を読みすぎて動けなくなるからダメだそう)を習い、家族で旅行やキャンプに出かけるなど、体験を重視した時間を過ごすようにしました。
同時に息子が不登校であることを周囲に積極的に相談し、理解や助けを求めるようにしました。私自身それは恥ずかしいことではなかったですが、今思えば気の毒に思っていた人も多いかもしれません。
結局息子の不登校は中学を卒業するまで続きましたが、穏やかにポジティブに過ごしたことで、彼の空気を読む力は次のステージに進み、相手の懐に入りつつ、物事を俯瞰して見ることもできるようになっていったように思います。
中学3年生になり、今さら中学には行けないけれど、高校には行きたいと自宅で受験勉強を始め、無事合格することができました。
高校デビューはアメ配りから
さて晴れて高校生になり、学校生活も新しい友達を作るのも久しぶりという息子は何をしたかというと、なんと「アメ配りおじさん」になりました。
毎日、パインあめを持ち歩き、初めて会う人に「アメ食べる?」と声をかけて配ったというのです。おかげであっという間に有名人になり、男女問わず友達をたくさん作ることができました。私は「変な子だね(笑)」と笑っていましたが、今思えば彼なりに頑張っていたのでしょう。
もちろん万事順調だったわけではありません。
5年間の不登校というブランクがあったので体力がなく、毎日学校に行くと疲れてしまったり、定期試験を受けたことがないので、試験前に勉強するという流れも知りません(笑)。書けない漢字もありました。でも多くの気の置けない仲間に囲まれ、楽しそうに学校に行ってくれているだけで私も幸せでした。
そうも言っていられなくなったのが、3年生になってからです。
大学受験を見据えて予備校にも通い始めたものの、息子は3年生の夏になっても軽音楽部の部長、そして文化祭実行委員として大忙し。受験勉強をしている様子はほとんどありません。豪を煮やした私は「勉強しないで受かるほど大学受験は甘くないんだよ」と言うと、彼は目に涙を溜めてこう言ったのです。「でもお母さん、僕は今、5年間手に入らなかった青春を取り戻しているんだよ」と。
その言葉を聞き、私は衝撃を受けました。本当にそうだ。彼は大切な“今”を過ごしている。高校生活はもう2度と戻らないけれど、受験は何回でもできる。
「そうだよね。そもそも5年間も学校行っていないのに、ストレートで大学に入れるわけないよね」「だよね、だよね」と、まだ秋の時点で浪人することを決めてしまいました。
もちろん、あわよくばとの思いもあり、ギリギリまで頑張りましたが、案の定志望校に合格できず、卒業式を迎えました。
小学校、中学校の卒業式に出ていなかった息子は今年、クラス代表として壇上で卒業証書を受け取ることができました。
頑張るこどもを清潔で快適な空気で応援したい
そんな息子にとって、家は安心できる場所であり、自室は自分の“城”のようなものでした。だからこそ、私も息子の部屋の空気はできるだけ快適な状態にしてあげたいと常に空気清浄機を稼働させてきましたし、受験シーズンには加湿器も導入して、空調管理には気を遣ってきました。勉強は本人が頑張るしかなく、親としてできることは栄養ある食事ときれいな空気を用意してあげることぐらいです。
というわけでわが家の“受験生のいる暮らし”はまだ続いています。これから1年弱、さまざまな面でサポートし、来年こそは家族そろってホッとできているといいなと願っています。
Text by 田中真紀子
ブルーエア空気清浄機
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家電を生活者目線で分析、執筆やメディア出演を行う白物・美容家電ライター。日常生活でも常に最新家電を使用し、そのレビューを発信している。専門家として取材やメーカーのコンサルタントに応じることも多数。夫、息子、犬(チワプ―)の3人と1匹暮らし。
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