コラムColumn

空気がきれいな秋、バンワークで心と身体を整える

2022.09.21エッセイ
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最近は少し涼しさを感じるようになったが、8月は猛暑日が続き、車内の気温が40度を超えることも珍しくなかった。私たち夫婦(編集ライター)はバンワーク(=車に乗って移動し、いろいろな場所で仕事をすること)が日常となりつつあるが、都内での取材が重なったこともあり、最近はその機会に恵まれなかった。

「車で仕事できないのであれば」と、自宅の一部を改造して仕事場を構築し直すことにした。これまで使っていた棚を分解・かさ上げし、その上に天板を取り付けて巨大なデスクを2つ作り出した。物理的なデスクトップが広くなったおかげで資料が広げられるようになり、仕事が捗ること、捗ること。

しかもバンワークとは異なり自宅はエアコンやお風呂、キッチン、トイレなどの設備が充実しているため、生活する上でなにひとつ不自由がない。おかげで仕事効率がアップし、普段の倍以上の量をこなすことができた。なんだ、家で仕事するっていいじゃないか。そんなことまで思うようになった。


わが家の仕事環境。DIYで大きなデスクを作ってみた。これだけのスペースがあれば仕事が捗ること間違いなし!


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しかし、やがて大きな問題があることに気づいた。それは、自宅だといつでもすぐに仕事ができてしまうということ。常に仕事Readyな状況が用意されているものだから、空いた時間を使ってつい仕事してしまう。気付けば、朝から晩まで仕事していた日もあった。そんな生活を続けているうちに、少しずつ疲れが蓄積されてしまったのだろう。ある日、夫がダウンしてしまった。


不便さだからこそオン/オフの切り替えが可能に

家にいると、1日中仕事してしまう。しかしバンワーク中は、そういう訳にはいかない。食事ひとつとってもそうだ。自宅なら冷蔵庫から食材を取り出し、キッチンで食材を切ってコンロで煮炊きすれば料理が完成する。
しかしバンワークは、そこまで機能が充実していない。私たちがバンワークで使用しているハイエースには小型冷蔵庫がついているが、容量が小さいため、食材は毎回スーパーに買い出しにいかなければならない。調理や食事スペースも十分ではなく、煮炊きするには都度カセットガスとガスコンロをセットしなければならないし、食事をする前に全て片付けておかなければならない。さっと作ってさっと食べるというわけにはいかないのだ。


Hayama RV Siteでバンワーク。プライベートウッドデッキにタープを張れば、かなり広いスペースで過ごすことができる


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夜はウッドデッキでお料理作り。この日はマルチグリドルでペッパーランチを作った


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私たちのような仕事はパソコンさえあればできてしまうため、仕事が混んでくるとオフタイムも仕事に割り当て、フル稼働してしまいがち。タイムフリー、ロケーションフリーといえば聞こえはいいが、要するに「やろうと思えば1日中ずっと仕事ができる」ということ。これを逆手にとり、「好きな場所で好きなときに自由に仕事する」と捉え直したのが「バンワーク」のコンセプトだ。

ただしバンワーク中は、家にいるときのように「いつ何時も仕事ができる」わけではない。先に説明したように、生活する上でやるべきことが多いため、「7時に食事をするなら6時には買い出しに出かけないと」「お風呂は9時までと決まっているから、8時には後片付けしておかないと」「移動するなら、その時間も確保する」というように、分刻み(というと大げさだが)でスケジュールを組んでいく。仕事ばかりにかまけている暇はないのだ。

つまりバンワークには明確なオン/オフがあり、オフタイムには仕事する余裕がない。つい仕事ばかりしてしまいがちな私たちにとって、これがとてもいいことだということに気づいた。


外気に触れ、朝日を浴びて心身を整える大切さ

バンワークのメリットとして、もうひとつ気づいたことがある。家で過ごしていると、なんでも家の中で完結してしまうため、あまり外に出かける機会がない。しかしバンワークの場合、トイレやお風呂は車の外にあるため、ことあるごとに外にでなければならない。ちょっと面倒なようにも思えるが、実はこれがとても大きなメリットだった。

タイミングがあえば、朝起きてすぐに外に出ると日の出を拝むことができる。よく「朝日を浴びると自律神経が整う」という話を耳にするが、家にいるとなかなか実行できない。しかしバンワーク中は、特に意識しなくても朝日を浴びる機会に恵まれる。これが私の体にとてもよい作用をもたらしているように感じる。

外気に触れると、季節や時間、場所が肌感覚で認識できる。先日、Hayama RV Siteにお邪魔したときのことだ。外に出た途端、濃い草の香りが鼻腔をくすぐった。あたりを見渡してみると、なんとすぐ近くでヤギが草を食んでいた。
こんな非日常的な光景を目の当たりにできるのも、バンワークならでは。深呼吸して草の香りを楽しみ、ゆったり食事しているヤギの姿を眺めている時間は、何にも代えがたい価値があると感じた。

バンワークは私たちの心と体の健康を守るために欠かせないものだが、諸般の事情により外に出かけられない日もある。そんなときは、自宅のベランダに机と椅子を出してちょっとしたアウトドア気分を楽しむことにしている。ベランダに出るだけで空気が変わり、気分もすっきり。また仕事をがんばろう!という気持ちになるのだ。


自宅のベランダに机と椅子を出し、アウトドアリビング気分を楽しんだ


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日差しが弱くなる秋は、空気の対流が起きにくいため空気中のホコリも少なく、空気がきれいな季節だ。快適な車中泊が楽しめる気候が続く。心と体の健康を保つために、これからも上手にバンワークを活用していこうと思う。

Text by 井上真花(オフィスマイカ)
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井上真花

雑誌、書籍、新聞やWeb記事などを制作する編集プロダクション「マイカ」社長。コロナ禍を機にフルリモート体制となり、自作キャンピングカーを職場とする「バンワーク」を実践中。ライター業では人物インタビューやモバイルガジェットのレビューを担当し、インタビュー企画「1000人に会いたいプロジェクト」をライフワークとしている。
オウンドメディア「別冊マイカ」:https://www.office-mica.com/magazine/(外部リンク)