コラムColumn

揺れる更年期の心を落ち着かせてくれる呼吸。 息を吐き切ったあとに新鮮な空気をたっぷり吸い込む幸せ

2023.11.30エッセイ

「2秒吸ったら4秒、3秒吸ったら6秒吐きましょう。吐く時間は吸う時間の倍です。慣れてきたら“吸う”と“吐く”の間に息を止める数秒を作れるとさらにいいですね。息を吐くときは“細く長〜く”を意識して。それから、できるだけ鼻で吸って鼻で吐いてください。鼻がウィルスや細菌をシャットアウトするフィルターの役目を果たしますし、鼻呼吸は口呼吸に比べて温かく加湿された空気がのどから肺にじんわり送られますから」

筆者が1年前から通うヨガスタジオのA先生は、レッスン前、こんなふうに呼吸について丁寧にガイドしてくれます。スタジオは郊外のターミナル駅からすぐの雑居ビル3階。大通りの空気はお世辞にもきれいとは言えませんが、一歩スタジオに入ると別世界。「ボタニカルガーデン」という名のヨガスタジオにはエバーフレッシュ、ウンベラータ、モンステラ、サンスベリアから巨大なヤシ、ゴム、ドラセナなどが所狭しと並び、南国のリゾートのよう。大小さまざまな緑に囲まれてレッスンを受けていると、次第に心が落ち着きます。

少人数制女性専用ヨガスタジオ
Botanical Garden
https://www.botanicalgarden.yoga/(外部リンク)


植物のパワーを感じながらリラックスできるヨガスタジオ。日曜夜19時〜の「癒しの眠りのヨガ」も気持ちよく、レッスン後はいつもよりぐっすり眠れます


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まさか私が更年期? 得体の知れない不安とドキドキ

筆者はおもにインテリアや整理収納、女性の体に関する医療記事やタレントさんへのインタビューなどを中心に取材と執筆を続けてきたフリーライター。ライター歴は今年で20年になります。不安定稼業のフリーランスですが、持ち前のフットワークの軽さとスピード、「なんとかなるさ」の楽観思考で、仕事、家事、育児を乗り越えてきたつもりでした。

ふたりの息子は大学生と高校生になり、さあもうひとがんばり!という「今ここ」ですが、最近どうも勝手が違う。う〜ん、どうも調子が出ない。人に会うのがおっくうで、理由もなく不安に駆られる……そして「あれか……」と腑に落ちるのです。あれ、とはつまり更年期。

日本産科婦人科学会編『産科婦人科用語集・用語解説集』(2019年)によると、日本人女性の閉経平均年齢は50.54歳。「卵巣から分泌される女性ホルモンは20代でピークを迎え、30代後半から分泌量が不安定になります。40代後半でホルモン分泌が落ち込み、とくに閉経前後の49、50、51歳は分泌が激しくアップダウン。のぼせ、ほてり、くよくよ、イライラ、手足のしびれや指のきしみ、不眠や尿もれなど、不調のオンパレードという人がじつに多いのです」といった記事を、筆者自身が今まで散々書いてきたわけですが、実のところ自身にはこれといった不調がなく「対岸の火事」でした。
しかし!気づけばいくつもの症状が筆者に当てはまる……夜は疲れて10時頃に眠るけれど、毎朝4時には目覚めてしまう。そのあと将来のこと、家計のこと、こどものことなどを考えると、不安が募り、ドキドキして寝つけない。急に上半身が熱くなる。寝起きに指がきしむ。夫のささいな言動にいちいち腹が立つ……う〜ん、もうそれら全部が更年期のせいって気がしてきました(苦笑)。


ベッドサイドにラベンダーやゼラニウムのアロマオイルを常備。香りにも助けてもらいながら不安定な心を落ち着かせます


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呼吸の効用。長く吐くと気持ちが自然に落ち着いて

そんな筆者の不安定な心を今、支えてくれているのがA先生のヨガレッスン。レッスンの1時間半は余計なことを考えず、自分の体と呼吸に集中します。吸うこと、吐くことだけに意識を向け、深い呼吸を繰り返しながら息をととのえていくと、張り詰めていた気持ちがゆるみます。呼吸に合わせて首や肩甲骨まわりをゆっくりほぐすと、体も温まってじつに気持ちいいのです。

「無理なく呼吸が続けられるようになったら、吸ってから吐くより、吐いてから吸うほうがさらにいいですよ。まずおなかから吐き切る腹式呼吸をしてお腹をぺたんこに。そのあとゆっくり息を吸ってお腹を膨らませてくださいね」とA先生。ストレスやホルモンバランスの乱れで交感神経がピリピリしている人ほど、意識的に腹式呼吸をしたほうがよいのだそう。「腹式呼吸を繰り返すことで副交感神経が優位に働き、心身をリラックスさせることができるんですよ」。

とはいえ「吐くのが先だっけ? あれ?吸うのが先だった?」などと考えすぎると気持ちよさが後回しになってしまう筆者なので、多少間違っても直感優先、気持ち良さ優先で呼吸を続けます。長〜く吐いて、つらくないくらいの数秒間息を止め、そのあとゆっくり吸うと、確実に落ち着くことがわかってきました。気持ちのよい意識的な呼吸は、場所を選ばずいつでもどこでもできるのが魅力です。しかもタダ!


観葉植物を見ると交感神経活動が低下し、副交感神経活動が上昇するとのデータも。観葉植物に囲まれながらのヨガと腹式呼吸は、いまや生活に欠かすことのできない習慣です


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空っぽは気持ちいい。吐いたあとはきれいな空気が吸いたくなる

意識的に呼吸をするにつれて湧いてきた感情は「空っぽになった肺にはなるべくきれいな空気を入れたい」。季節は刻一刻と冬に近づいていますが、朝は窓を一度全開にして部屋の空気を入れ替えたり、公園に面したベランダに立って新鮮な空気をたっぷり吸ったりする昨今です。最近は空気がよどみがちな廊下に空気清浄機の導入も検討中。「この場所の空気が整っているか、よどんでいるか」についても、呼吸に意識を向けると直感的にわかるようになってきました。空気が整っていると「よし!今日もひとつがんばりますか」と気持ちが前向きになるのですよね。ほかにも床にものを置きっぱなしにしないこと、朝起きたらハンディモップ片手に、ほこりを取り除くのも習慣にしました。クリーンで整理整頓されたて空間は、呼吸もしやすい気がします。

食べることも寝ることも運動することもとても大事。でも何より大事、というかこれがないと死んでしまうのが「呼吸」。息を吸う、吐くなんて、あまりに当たり前のことすぎるのかもしれませんが、改めて呼吸に意識を向けると、いつでも存分に空気を吸えることに感謝の念がわいてくるのでした。

筆者の更年期はもう少し続きそうですが、この乱気流を抜けたら着陸に向かってソフトランディングできるように、ヨガに通い、ときどきゆっくり呼吸をして、眠れるときはしっかり眠って。自分の心と体をいたわりながら過ごしていきたいです。


わが家の前にある公園。人が少ない時間を見計らって公園にヨガマットを持ち込み、セルフヨガをすることも。ストレッチしながら澄んだ空気を吸い込むと、心がすっきりしてきます


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Text by 宇野津暢子
ブルーエア空気清浄機

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ライター
宇野津 暢子

出版社勤務後フリーに。『暮しの手帖』(暮しの手帖社)、『天然生活』(扶桑社)、『レタスクラブ』(K A D O K A W A)、『サンキュ!』(ベネッセコーポレーション)など、おもに女性向けの生活情報誌にて暮らしまわりの記事を執筆。「旬のカレンダー」(ダイヤモンド社)、「かける手間が半分に 困りごと解決!家事ワザ262」(K A D O K A W A)などの生活実用系書籍の執筆も手がける。ライフワークとして玉川学園の地域フリーペーパー「玉川つばめ通信」もひとりで不定期発行中。
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