コラムColumn

こどもが犬や猫を欲しがったときに考えるべきこと

2020.12.08インタビュー
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こどもは、「わんわん」「にゃんにゃん」という言葉を早くに覚えます。それは、儚い命を守りたいという意識の表れかもしれません。こどもに身をもって命の大切さを教えてくれる犬や猫を迎えたいと願ったとき、親御さんはどのようなことに気を付けたらいいでしょうか。愛玩動物飼養管理士・ペット栄養管理士の資格を持つ筆者が、獣医師の小林充子先生に伺いました。



小林充子先生
獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行う。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。保護猫活動、保護犬活動にも熱心で、ミルクボランティアなども積極的に行っている

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犬や猫にはこどもの精神を安定させる効果があります

小林充子先生は、こどもがペットを飼うということには精神医学上、次のような効果があるといいます。

「犬や猫を抱き上げると、体温や柔らかさとともに、心臓の鼓動という“命”を感じることができます。また、犬や猫は愛情をもって接する人間を決して否定しません。ありのままの自分を好きでいてくれて、受け入れてくれる。それはこどもの成長において、かけがえのない経験といえます」(小林先生)。

犬や猫の平均寿命は伸びており、犬種や猫種にもよりますが、適切な飼育をすれば10~15年ほど生きます。こどもが小さい頃に犬や猫を迎えると、思春期に寿命を迎えることになりますから、犬や猫はその身をもって、命を失うことの悲しさ、辛さを、そして、その大切さ、素晴らしさを教えてくれるでしょう。

もっとも、寿命が長いということは、その間は必ず責任をもって飼育をしなければなりません。この点において心配なのは、家族のアレルギーです。

「例えば犬でしたら、毛が抜けないプードルや、プードルの血が入ったミックス犬、さらにマルチーズやヨークシャー・テリアなどは比較的アレルギーを起こしにくい犬種です。また猫についても、シングルコートのシンガプーラなども同様に毛が抜けにくく、アレルギーを起こしにくい猫種といえます。長毛種でもシングルコートのメインクーンは毛が抜けにくいですし、スフィンクスやデボネックスなどヘアレスに近い子たちもアレルギーを起こしにくいといえます。

もっとも、アレルギーのリスクを減らせるとはいえ、アレルギー源は毛だけではありませんし、アレルギーを起こさないわけではありません。犬や猫を迎える前に、今までにアレルギー症状が出たことのある方はもちろん、家族でアレルギーの有無について血液検査を検討するのもいいと思います。最近では犬と触れあえる施設や猫カフェなどもありますので、そういった施設で犬や猫を直接触ってみて、アレルギー反応が出るかどうか、あらかじめ確認しておくのもいいですね」(小林先生)。

筆者の場合、生まれたときにすでに犬が家にいて、結婚時も妊娠時も実家から連れていった犬2匹がいました。息子は生まれつき小児喘息がありましたが、アレルギー専門医と相談し、息子の投薬管理をしながら育てました。水泳療法なども取り入れた結果、小学5年生となった今では喘息の発作が起きることはほぼありません。しかし、これはあくまで筆者の家庭の例であって、犬や猫を迎えたはいいが育てられなくなるという悲劇を避けるためには、アレルギーに関しては特に慎重に考えられたほうがよいかと思います。

アレルギーがなくても、空気清浄機などで常に空気を管理しておくことが大切です。ペットを飼うことで生じるニオイなども抑えることができます。



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迎える時期についても考えましょう

では、犬や猫を迎えるベストな時期はいつでしょう。

「私はアトピー性皮膚炎で犬や猫に対してアレルギーをもっていますが、妊娠中、猫と暮らしておりましたし、獣医師としての仕事もしておりました。とはいえ、妊娠中は飲める薬、塗る薬が限られますし、アトピーの症状が重くなることもあります。妊娠中に犬や猫を迎えることは熟慮が必要でしょう」(小林先生)

こどもが生まれると、生活が今までとはがらりと変わります。赤ちゃんの頃は、夜寝られないこともしばしばです。妊娠中に迎えるよりも、子育てが一段落したときに迎えるほうがよいと筆者は考えます。

ただ、こどもが3~4歳くらいになってくると、犬や猫をほしがることも多くなります。また親御さんの中にも、子育てで一番大変な時期を乗り越え、こどもが幼稚園などに通うようになると、犬や猫を飼いたいと考える方も多いでしょう。

「お子さんのほぼ100%が、一度は犬や猫を飼いたいと言ったことがあるのではないでしょうか(笑)。特に今は少子化で、お子さんがひとりのご家庭も増えていますから、人間が兄弟姉妹を通して育む情緒を犬や猫で、とお考えになる親御さんも多いと思います。
その場合に、まず考えていただきたいのが、アレルギーの問題です。アレルギーがなく、住環境において飼育に問題がないなら、次に、どういうライフスタイルを犬や猫と育んでいきたいかを考えてください」(小林先生)


犬や猫を迎えるとライフスタイルががらりと変わる

まず、犬や猫がいると、今までのような自由な旅行はしにくくなります。どこかに預けるにしろ、連れていくにしろ、場所の吟味が必要です。預ける場合は信頼できる動物病院やペットホテル、ペットシッターなどを、連れていく場合はペットを同伴できるホテルを探さないといけません。

また、犬や猫を飼育するにはお金がかかります。毎年のワクチン、健康診断、病気になれば医療費がかかりますし、種類によってはトリミングなどのケア代が必要です。さらに、日々のフード代、トイレシートやトイレ砂などの費用もかかります。

大型犬を飼う場合は、より熟慮が必要です。今、筆者はオーストラリアン・ラブラドゥードルという15kgほどの犬と暮らしていますが、それまではトイ・プードルやフレンチ・ブルドッグ、ヨークシャー・テリアといった小型犬としか暮らしたことはありませんでした。大型犬はトリミング代も小型犬と比べると高額ですし、運動量が必要なのでお散歩の時間も長くなりました。

最近はペット可のマンションも増えていますが、犬や猫の体重制限や頭数制限があるところも多いです。体重が12kgまで1匹限りというところも多いので、住む場所にも制約があります。転勤が考えられるご家庭の場合は、その点も検討する必要があるとよくお考えになったほうがいいかと思います。


飼うなら犬と猫、どちらがいい?

もし飼うとしたら、犬と猫で暮らしにどのような違いが出てくるのでしょうか。

「犬はこども、猫は同居人が増えるとお考えになると想像しやすいと思います。犬はこどもでもお世話をさせてくれますが、猫はこどもが苦手な子も多いです。犬はしつけができますが、猫は犬ほど厳格なしつけができません。猫は人の言うことを聞いてはいますが、やりたくないことはしません(笑)。もっとも、子猫のときからお子さんも飼育に参加していれば、いい遊び相手になってくれるでしょう。子犬も子猫も大人の言うことは聞いても、こどもが相手だと甘噛みしたり、ひっかいたりすることもあります。それを兄弟げんかのようなものだと思い、見守る姿勢も親御さんには必要になってきます」(小林先生)

犬や猫がいる生活は、本当にかけがえのないものです。筆者も、妊娠中や息子が1歳で夜泣きが絶えないとき、実家から連れて行った犬には愚痴を聞いてもらったり、いやしてもらったりと本当にお世話になりました。



息子が熱を出したときは、犬が息子に寄り添って寝てくれました

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息子が3歳のときにフレンチ・ブルドッグが、小学2年生のときにトイ・プードルが亡くなりましたが、3歳のときはよくわかっていなかった死を2年生のときには実感し、犬の亡骸にすがって大泣きする息子を見て成長を感じたものです。

今、家にはオーストラリアン・ラブラドゥードルの愛犬アニィがいますが、最近では小学5年生になった息子がひとりで散歩にも連れて行きます。



息子が親には言えないような日頃の愚痴をアニィにこぼしながらなでている姿を見ると、犬が息子の心の支えになっていると実感します。

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また犬にも自分の意思があり、自分の思い通りになるわけではないと学ぶことは、友達付き合いの上でもいい影響があると思います。息子は友達との付き合いが上手ですし、友達もたくさんいます。また、一緒にお散歩に行くことで、ご近所で犬を連れている方との会話の機会が多くなり、街になじむこともできました。犬を飼っていない友達が家に遊びに来たり、一緒にお散歩に行ったりということも多いです。

夫や私と息子が喧嘩したときは、犬が仲をとりもつように間に入ってくれる姿を見て大笑いし、仲直りということもよくあります。犬や猫は、愛情を注ぐほど家族を愛してくれますし、愛情を返してくれます。いろいろなことをよく考えたうえでお迎えになれば、家族の笑顔がもっと増えるでしょう。

皆様に、犬や猫が幸せを運んでくれることを心よりお祈りしています。

Text by 石原 美紀子

ブルーエア空気清浄機 : https://www.blueair.jp/

※1:Camfil社による実証データ。実際の効果は、部屋の状況や使用方法により異なる。

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愛玩動物飼養管理士・ペット栄養管理士
石原 美紀子

愛玩動物飼養管理士・ペット栄養管理士。犬の訓練をドッグトレーニングサロンで学びながら、愛玩動物飼養管理士1級、ペット栄養管理士の資格を取得。著書に「ドッグ・セレクションベスト200」、「室内犬の気持ちがわかる本」(ともに日本文芸社)、「犬からの素敵な贈りもの」(出版社:インフォレスト) など。愛犬はオーストラリアン・ラブラドゥードル。