コラムColumn
誰もが心待ちにしている! 家族で過ごす、スウェーデンのクリスマス
イルミネーションが点灯し、街中に赤や緑が溢れてクリスマスムード一色になると、慌ただしい季節ながらも、心が緩み、ウキウキしてきませんか。クリスマスは日本でも特別感のあるイベントですが、スウェーデンでは、ひときわ大切にされています。大人もこどももこの日を心待ちにし、よろこびに溢れながら準備を進めます。
そんなスウェーデンのクリスマスについて、木のぬくもりと北欧インテリアに囲まれた理想の家づくりを提案するスウェーデンハウスの川田真純さんと後藤公江さんにお聞きしました。
株式会社スウェーデンハウス
スウェーデンには「親の代で家を建て、子の代でサマーハウス(別荘)を、さらに孫の代ではヨットを。」という言葉があるように、世代を越えて住み継ぐ家づくりや暮らしへのこだわりをそのままに、日本の風土に合う住まいを提供している。(写真は北海道マイホームセンター帯広会場内、帯広モデルハウス)
クリスマスは、光をもたらす喜ばしいイベント
――スウェーデンの人々にとって、クリスマスはどのような意味を持つイベントなのでしょうか。
スウェーデンは冬になると極端に日照時間が短くなります。朝8時頃まで外は真っ暗ですし、ストックホルムでは午後3時くらいには薄暗くなってしまいます。太陽も日差しもなく、寒くて暗いスウェーデンの冬は本当に過酷なんです。スウェーデンではクリスマス前の12月13日、旧暦で冬至に当たる日に聖ルシア祭という行事を行います。「ルシア」とはイタリア語で「光」を意味する言葉で、暗闇に光をもたらすお祭り。同様に、暗い街を明るく照らし、人々の心に光をもたらすクリスマスは、日本に暮らす私たちが想像できないくらいに喜ばしい伝統行事なんです。
――それほどクリスマスを心待ちにしているのですね。
スウェーデンの人々のSNSを見ていると、クリスマスへの期待や盛り上がりが伝わってきます。「今年はこんな飾りにしよう」「こういうプレゼントを用意しよう」と盛り上がっていますよ。家族に贈るプレゼントのためにクリスマス貯金をしたり、飾り付け用の予算を用意しているご家庭もあるそうです。
4週間前から準備スタート!クリスマスシーズンをどう過ごす?
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――クリスマスの飾り付けはいつ頃始まるのでしょうか。
12月25日の4週間前の日曜日から「アドベント」と呼ばれるクリスマスの準備期間がスタートします。今年は第1アドベントと呼ばれる12月3日から飾り付けを行い、1本目のキャンドルに火を灯します。その後、毎週日曜日ごとに1本ずつ火を灯しながら、家族みんなでクリスマスを待ちわびます。このアドベントキャンドルや「ベツレヘムの星」と呼ばれるアドベントスターを窓辺に飾るご家庭も多いですね。こうした風習は、窓から差し込む光に特別な思いを寄せるスウェーデンの人びとの暮らしを象徴しているように感じます。
また、クリスマスツリーには麦わらで作られたヤギのストローオーナメント「ユールボック」を飾るのもスウェーデンならでは。オーナメントも手作りする方が多いですね。毎年この時期に各地で開催されるクリスマスマーケットでも、手作りのかわいらしいオーナメントが並びます。
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――クリスマスツリーは、本物のモミを飾るのが伝統だと聞きました。
そうですね。ツリーの調達も、スウェーデンの人びとにとっては幸せなクリスマス準備のひとつになっています。ちなみにスウェーデンでは、Tjugondedag Jul/シューゴンデダーグ・ユール」と呼ばれる1月13日までツリーを飾り、クリスマスの余韻を楽しみます。
一度食べてみたい!スウェーデンのクリスマスグルメ
――クリスマスディナーといえば、スウェーデンでも七面鳥の丸焼きでしょうか。
スウェーデンでは、かつて自分の家で育てた豚肉を丸焼きにして食べていたそうですが、今では茹でた豚肉に卵黄と粒マスタードとパン粉を塗ってオーブンで焼いた「Julskinka(ユールフィンカ)」というクリスマスハムを食べるのが一般的です。スウェーデンのクリスマス料理は「Jul Bord(ユールボード)」と呼ばれ、日本のおせち料理のように保存のきく料理を何種類も作ってビュッフェ形式で楽しみます。サーモンのマリネやニシンの酢漬け、ミートボールなどがユールボードの定番メニューですね。
クリスマスケーキを食べる風習はありませんが、シーズン中は「Lussekatt(ルッセカット)/ルシアの猫」という名前のサフランパンやシナモンやレーズン、ナッツ、スパイスなどが入ったグロッグというホットワインを楽しみます。クリスマスシーズンのフィーカ(スウェーデン語で「コーヒーブレイク」の意味)では、このグロッグとルッセカット、ジンジャークッキーなどをいただきます。
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――スウェーデンのクリスマスと言えば、ジンジャークッキーも有名ですね。
はい。スウェーデン語で「Pepparkakor(ペッパルカーコル)」と言って、クリスマスには欠かせないお菓子です。多くのご家庭で手作りしますが、薄く焼くのが難しいのだそう。割れてしまったものは大きな缶に入れておやつに食べて、上手に焼けたものはクリスマス当日に食べたり、オーナメントにして飾ったり。ジンジャーブレッドハウスを作るご家庭もあるようです。
【ジンジャークッキーの作り方】
監修:見瀬理恵子さん
●材料(ハート型か花型で約6cmのクッキー125枚分)
・ブラウンシュガー ・・・・・ 135g(なければグラニュー糖で)
・ガムシロップ ・・・・・ 75ml(メープルシロップで代用可)
・水 ・・・ ・・75cc
・バター ・・・ ・・150g
・シナモンパウダー ・・・・・ 大さじ1
・ジンジャーパウダー ・・・・・ 大さじ1
・クローブパウダー ・・・・・ 小さじ1
・薄力粉 ・・・・・ 360g + 打ち粉
・重曹 ・・・・・ 小さじ 1 1/2
●作り方
1.砂糖、ガムシロップ、水を鍋に入れて砂糖が溶けるまで火にかける。
2. 1にバターを入れて溶かしてから冷ます。
3.薄力粉に重曹を混ぜ合わせ、2とよく混ぜて、こねる。
4.出来上がった生地はラップに包んで、冷蔵庫で一晩寝かせる。
5.オーブンを175℃~180℃に設定する。
6.台に打ち粉をふり、4)の生地を薄くのばす。
7.好みの型で抜いてオーブンシートを敷いたオーブンプレートの上にのせていく。
*ヘラやスケッパーを使うと扱いやすい。
8.設定温度に温まったオーブンに7)を入れ約6~8分焼く。
*かなり柔らかい生地なので薄くのばすのが大変ですが、1~2ミリの薄焼きのほうが美味しくし仕上がります。難しい場合は生地に小麦粉を少々足して硬めの生地にしてもよい。
*自家製ガムシロップを作る場合は、水 250cc、グラニュー糖 90gを鍋でキツネ色になるまで煮詰める。
参照:mjuk「12ヶ月のおいしい話」
第21回Pepparkakor(ペッパルカーコル)ジンジャークッキー より
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クリスマスは家族と過ごす大切な日
――スウェーデンでは、クリスマスをどのように過ごすのでしょうか。
クリスマスは家族で過ごす時間で、親戚一同が集まり、まるで日本のお正月のような雰囲気です。お父さんがサンタクロースに扮したり、みんなでプレゼントを開けるのも楽しいひととき。家族でクリスマス料理を食べながら、会話を楽しみます。スウェーデンの人々とって、クリスマスの期間は誰もが家族とゆっくり過ごして充電し、新年から再び動き出すための英気を養う期間なのだと思います。
――スウェーデンの人びとにとって、クリスマスは本当に特別なものなのですね。特にスウェーデンのクリスマスが素敵だと感じるところはありますか。
クリスマスが近づくごとに、モミの木の清涼感のある香りや、グロッグの香り、そしてシナモンなどのスパイスや「フルーツポマンダー」と呼ばれるオレンジとクローブが混じり合った香りなど、家が特別な香りで満たされていきます。きっと、香りに彩られたスウェーデンのクリスマスの記憶は、時間が経っても色褪せないのでしょうね。
―家族と過ごした暖かい時間と結びつく香りの記憶は、より一層心に刻まれそうですね。スウェーデンの人びとは、住まいの環境にもこだわっているのでしょうか。
クリスマスが象徴するように、スウェーデンの人々にとっての住まいとは、家族が心地よく過ごせる最高の場所です。明るい夏も暗い冬も、一年を通して家族が良い時間を過ごすために室内の環境を整えることは、私たち日本人が想像する以上に重要なことなのだと思います。
クリスマス当日を待ちわび、その日を素晴らしい1日にするための準備まで楽しみながら過ごすスウェーデンのアドベント期間。スウェーデンの人びとの高揚する気持ちに思いを馳せるだけで、何だかワクワクしませんか。今年のクリスマスは、窓辺の飾りやフレッシュな針葉樹のツリー、ジンジャークッキーなど、スウェーデンの伝統的なクリスマス文化を取り入れみても素敵ですね。
私がつくる。mjuk(ミューク)
mjuk(ミューク)はスウェーデンハウス提供の暮らしを楽しむWEBサイト。現地在住ライターによるコラムやスウェーデン料理のレシピ、ハンドメイドやインテリアのアイデアを掲載しています。
https://www.swedenhouse.co.jp/mjuk/
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Neem Tree羽田朋美
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