コラムColumn
「空気感染」と「飛沫感染」「接触感染」の違いは?
新型コロナウイルスが、私たちの日常生活にも影響を及ぼすようになってきた。4月7日に東京をはじめとした7都府県で緊急事態宣言が発令され、学校も休校に。企業はテレワークの導入に追われており、筆者もここ3カ月は所属する会社のオフィスにほとんど顔を出さず、自宅での作業がメインとなっている。
そんななか日々恐ろしく感じているのが、真偽不明の誤情報や偏った報道によって人々が過剰なアクションを起こしてしまう現象だ。筆者の住む街でも、いまだにマスクやトイレットペーパーを買うことが困難な状況が続いている。
パニックに陥ることなくこどもたちを守るためには、ウイルスや今の日本についての客観的な情報を知り、「正しく恐れる」ことが不可欠。まだまだ解明されていないことも多い新型コロナウイルスだが、今回は感染経路の代表的なパターンである「空気感染」と「飛沫感染」、さらには「接触感染」の違いについて、埼玉医科大学総合診療内科の山田悠史先生に解説してもらった。
ほとんどのかぜウイルスは「飛沫感染」によって伝染する
そもそも空気感染と飛沫感染とはどんな現象を指すのだろう。
「『飛沫』とは、人がせきやくしゃみ、喋ったときなどに口から出る小さな水滴のことです。唾やたんに加えて、ウイルスが含まれることもあります。この飛沫は大気中に放出されると重力に従って地面に落っこちたり乾燥してより小さくなり、やがてなくなってしまうので、多くの場合、約1メートルしか飛ぶことはありません。この飛沫を吸い込んでしまい、感染症にかかってしまうことを『飛沫感染』と言います」
「一方で、一部のウイルスは、大気中に放出されて乾燥しても、存在することができます。この残ったウイルスは、空気中に漂って、それを吸い込んでしまうと感染してしまいます。これが『空気感染』となります」(山田先生)
なお、現代で空気感染する感染症としては「麻疹(はしか)」「水ぼうそう(帯状疱疹)」「結核」の3つが挙げられる。一時期、「新型コロナは空気感染する」という記事がメディアに掲載されることがあったが、これは誤情報とされており、「ほとんどのかぜウイルスは『飛沫感染』によって伝染する」(山田先生)という。
さらに、空気感染と飛沫感染に隠れて軽視されがちなのが「接触感染」だ。「接触」というと、人と人が握手をしたり、ハグしたりすることで伝染するとイメージされがちだが、実際は人同士でなくても気をつけなければならないケースがある。
「例えば、ウイルス感染者のせきやくしゃみで飛んだ飛沫が、スーパーに並んでいるポテトチップスの袋に付着したとします。すると、たんなどに混じったウイルスはある程度の時間、ポテトチップスの袋の上で存在できてしまうのです。すると、次にそのポテトチップスの袋を触ったり、購入した人の手にウイルスが移ります。そして、その人がその手で自分の鼻や目を触ったりすると、ウイルスが身体に入ってしまいます」(山田先生)
この経路の場合、マスクをしているからといって、絶対に安全ではないということになる。また、飛沫感染を起こすとされる多くの粒子より小さな粒子を吸い込んで感染する「エアロゾル感染」という感染経路もあり、この小さな粒子は約2メートル空気中を漂うことができるという。なので、国や多くの自治体が推奨している「他人と2メートル以内に近づかない」という予防対策は理に適っていると言えるのだ。
手洗いやうがいを徹底した上で空気清浄機の活用を
昨今、空気清浄機がとにかく売れている。コロナウイルス感染拡大の影響で、目に見えない空気を少しでもきれいに保ちたい、という想いが人々の間で強まっている表れだろう。だからといって、空気清浄機を設置したからもう大丈夫だと油断してはいけない。結局は普段の手洗いとうがい、日常的に他人との近距離での接触や人ごみを避けるといった行為を心がけることこそが、ウイルスを遠ざける最も重要な手段なのである。
では、これらの感染症から身を守るために、空気清浄機ができることはあるのだろうか。山田先生は「空気清浄機が直接ウイルスから身を守ってくれるというエビデンスはない」と話す一方、多くの空気清浄機に搭載されている「HEPAフィルター」は、新型コロナウイルスと闘う医療現場でも活用されているという。
「気管挿管(のどに人工呼吸器をつなぐためにチューブなどを挿入する行為)をしなければならないほど重篤な患者さんの吐いた息からウイルスが舞うのを防ぐために、器具の先端にHEPAフィルターを装着することで、コロナウイルスが飛散しないようにするという取り組みが行われています」(山田先生)
一方、ブルーエアの空気清浄機は「HEPAフィルター」以上の効果が期待できる。なぜなら、一般的な空気清浄機のHEPAフィルターが、日本工業規格(JIS規格)にて「定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」として定義されているのに対し、ブルーエアは、独自に開発したフィルターと粒子イオン化技術をかけあわせた「HEPASilent® テクノロジー」を採用することで、0.1μm以上の微粒子を99.97%除去*という性能を実現。ウイルスレベルの微粒子の除去も可能としているからだ。
また、乾燥した空間においては加湿することがのどの粘膜を守るという意味でよいといわれているが、「湿度を上げすぎることで、本来は乾燥して死滅するはずだったウイルスが残存する可能性がある」(山田先生)ことから、加湿器は逆効果になる可能性もあるという。50~60%の適切な湿度を保つといいだろう。
ウイルスは怖がりすぎず、正しい知識で正しく恐れよう
巷では「インフォデミック(Infodemic)」という言葉も話題となっている。インフォデミックとは「正しい情報と不確かな情報が混じり合い、人々の不安や恐怖をあおる形で増幅・拡散され、信頼すべき情報が見つけにくくなり、混乱状態となること」とされており、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した時に使われるようになった言葉だ。
こどもたちを守るために私たちに求められていることは、正しい知識を得ることにより、ウイルスを「正しく恐れる」こと。私たちがメディアとして情報を発信するときも、この意識を心がけていきたい。
Text by 東春樹
* Camfil社による実証データ。実際の効果は、部屋の状況や使用方法により異なる。
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